◆人間のルーツ

 __遥かな大昔。

人間は、こことは別の緑豊かな惑星に住んでいた。

空が見える陸上に生まれた人間は、絶えず降り注ぐ太陽の光を浴び、長い間健やかに暮らしていた。


 ところが、時代と共に科学技術を発達させるにつれ、人間は愚かな顔を露わにするようになる。

森林を次々切り倒しては、住宅や工場を造ったり処理しきれなくなったゴミを埋め立てたりした。

こうして緑がなくなった場所は空気と水が汚染され、住んでいた動物も減った。

また、陸だけでなく海も汚染され、魚も減った。


 それにも関わらず、人間は涼しい顔で、おのれの欲望を満たすためならば、例え自然破壊だって顧みなかった。

自然破壊が悪化の一途を辿るのを目の当たりにしても人間は、自分達さえ良ければどうでも良い、と気にせず何の手も打たなかった。


 塵も積もれば山となるように、人間の過ちの積み重ねによって、生命を育む惑星は、いつしか死の惑星と変わり果てる。

故郷の惑星が滅んだことで、自業自得にも、人間は別の惑星へ移住を余儀なくされた。


 数々の過ちを繰り返した人間に残されていたのは、氷に覆われた海洋惑星だけだった。

しかも、地表は極寒かつ低酸素なので移住に適さない。

本来人間は陸上動物であるがために水中での生活には適さないものの、氷の下の海底でなら何とか住めなくもなかった。

人間は、光のない暗闇で過ごすことと引き換えに、最後の生存圏である海の惑星へ移り住み、ゼロから開発を始めた。


 一方、その海洋惑星を守護する神々は、外から人間が侵略しに来ていることを察知する。

彼らは緊急で集まると、反撃のために槍や弓を持った。

武装した神々は、人間を侵略者であると見なし、一斉に攻撃を仕掛けた。

もちろん人間の方も黙るはずがなかった。そればかりか人間は、高度な技術で作ったサメ型潜水戦艦で神々を追い詰め圧倒した。


 大戦争の結果、勝利を手にした人間は、海底に新しい都市を築いた。

その際、外部から水が流れ込まないように、区画全体を覆うように巨大なドームを建設した。

丈夫で巨大な泡を人工的に作る技術が、太古の人間にはあったのである。

神々という邪魔者がいなくなり調子に乗った人間は、次々とドームを建設するため、周りのサンゴや海藻を取り除くなどして自然破壊を止めなかった。

だが、元々人間は、深海の暗い環境に慣れていないため、体調を崩したり精神的に不安定になったりする人も急増し、社会を悩ませた。


 このような社会問題を抱えつつも、人間は、都合の良いように海の自然を搾取して、欲望のままに移住生活を謳歌していた。

そんな人間達に、神々は激怒した。

まだ完全には負けていなかった神々は最後の力を振り絞り、巨大な海底地震を起こした。


 怒りをも感じるほどの激しい震動が海底中を伝わったことで、何百万ものドームが破壊され、何十億人もの犠牲が出た。

あまりに被害が大きすぎて、文明は原始時代レベルへ逆戻り、ドームを作る技術をはじめ、数多くの技術が失われた。

海底中を揺るがし怒り狂った末、力を使い果たした神々は、現代に至るまで長き眠りへつく。再び、人間に復讐するための力を蓄えるべく。


 そして八年前、神々の目論見通り、二度目の巨大地震が起こった__

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