◆侵略軍団のエリートコンビ

 星空が見える空間。氷で覆われた海の惑星に、一機の宇宙船が近づく。

その宇宙船は、一瞬にして跡形もなく姿を消した。

ただ、本当に消えたわけではなく、氷の下の海へ転移し、偵察を開始した。


 宇宙船はしばらく海の中を漂っていた。

しかしある時、二人組のうち太った男が、窓の外を指差した。


「おい見ろ、サメの形をした潜水艦が見えるぞ!」


 もう一人の痩せた男も反応した。


「確かに怪しいですね。調べてみましょう」


 痩せっぽちのガスはタブレットを取り出し、図鑑機能を開いて調べる。そしていきなり、血相を変えた。


「どうしたんだ、ガス! 顔色が悪いぞ!」


 太っちょのガイが心配そうに声をかけると、ガスは緊張した様子で言言う。


「あ、あれは……ただの潜水艦ではありません。古代に海の守り神をも打倒した危険兵器、潜水戦艦です! 非常に強大な力を持っています!」

「何だと!」


 ガスの説明を聞いて、ガイも青ざめた。


「奴は我々を追い払おうとしているのでしょう。このままでは、危険です!」

「よし、向こうはまだ我々に気づいていないようだ。ビーム攻撃!」


 ガイはレバーを押し、潜水艦の方向へ前進させた。

すると突然、宇宙船全体に衝撃が伝わった。

何かが激しい勢いで宇宙船に衝突してきたのだ。


「大丈夫ですか!?」

「ああ、心配はいらない……」


 ガイはそう言って操縦桿に触ろうと顔を上げた。しかし目の前には、子供のシャチの姿があった。

その後ろからは大勢のシャチの集団が、こちら目掛けて襲いかかって来た。


「前からシャチが!」

「逃げるぞ!」


 ガイはレバーを引いて後退りし、宇宙船はシャチから逃れた。


「シャチが邪魔で近づけないならば、遠くから攻撃すれば良いのです」


 ガスのアドバイスで、ガイは先程よりも遠い距離から、シンの潜水艦を狙う。


「よし、気を取り直して、ビーム攻撃!」


 号令とともにボタンを押し、ビームを発射。

しかし、ギリギリ当たりそうなところを避けられてしまった。


「今度は、後ろからクラゲが来ます!」

「何……」


 ガスに言われてガイが後ろの窓を見ると、巨大なクラゲのようなスライムのような恐ろしい外見の生物が、こちらを睨みつけていた。

背筋を凍らせたガイは宇宙船を急発進させて逃げようとした。だが抵抗も虚しく、触手に捕まってしまい身動きが取れなくなる。


「やめろ、放せ!」


 必死に抵抗しても触手は強く放さず、ようやく数十分ほど経って脱出に成功した。

それからしばらく辺りを探し回り、再びサメ型の影を見つけた。


「潜水艦を見つけました!」

「よし、今度こそ喰らえ! ビーム攻撃!」


 ビームは影に命中した。


「やったぞ! ついに当たったぞ!」


 喜ぶガイ。ところが影はそのまま沈まないどころか、こちらに近寄ってくる。

よく見ると、影はサメ型潜水艦ではなく、本物のサメ__それも凶暴な大型の個体だった。


「違いました、前からサメが!」

「おい!」


 ガスの叫びでガイは我に返り、レバーを手に取る。


「とにかく、猛スピードで逃げるぞ!」


 作戦が失敗して大型ザメから逃げ回った挙句、シンの潜水艦を探していたはずが返って遠ざかってしまった。

潜水艦を見失った二人組は、責任を押し付け合って言い合いになった。


「この野朗! お陰でせっかく見つけたと思ったら、逃しちまったじゃねぇか!」

「いいえ、ガイ様がよく確かめずにすぐ行動するからですよ!」

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