◆自由研究計画

 ベッドから起き上がるとすぐ、いつも読んでいるお気に入りの本を開く。

海の上の世界は過酷な場所なので、実際に行くならば万全の準備は怠ってはならない。

もう何度も読み返しているので、頭の中に叩き込まれているが、大事なことなので改めて読み返した。


 長期休暇まであと二週間もない中、今日は授業で、自由研究の計画を立てることになった。

もちろんシンは、実際に海の上の世界に行ってそこで写真を撮る、というテーマに決めた。


 そして、ワクワクな気持ちで楽しく準備と計画を進めていく。ただし、危険な挑戦なので周りにばれないように、例え聞かれても答えないように隠した。

学校が終わると商店街へ行き、こっそり貯めたヘソクリで食料と機材、装備と道具など必要な物を調達する。

その後は、見つかって怪しまれないための対策として秘密基地の潜水艦に隠し置いておく。


「水、食料、気密服、お気に入りの絵本……」


 着々と準備が進んだが、一つだけ大事な物を忘れているような気がした。


「……そうだ、カメラだ」


 どんなに美しい景色も、カメラがないと撮れない。

しかし、シンは自分のカメラを持っていない。


「こんな時はおじさんのところへ借りに行こう!」


 おじさんとは、シンの数少ない友達であり良き理解者である。カメラオタクといわれるほどカメラが大好きだ。

そんなおじさんがカメラを持っていないはずがない、と早速シンは近所のおじさんの家へ向かった。

おじさんの家は施設の隣の隣にある。


「おじさん、お邪魔します!」


 おじさんの家に上がって、シンはびっくりした。小さいおもちゃから、プロ向けの高級品まで、部屋の棚にはよりどりみどりのカメラがずらりと並んでいたのだ。


「よく来たね、最近学校はどうだ?」


 おじさんは陽気な調子でしゃべった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る