◆無事脱出
シンは大パニックのあまり、角に肘をぶつけてしまった。肘には強い痛みが走った。
「いったぁ……」
次の瞬間、潜水艦全体が大きく揺れた。
シンは驚いて、操縦席に寄り掛かるように倒れた。
「地震……?」
潜水艦が何かとぶつかったのだろうか。突然、重々しくけたたましい衝突音が耳を通る。
思わずシンは耳を塞ぎ、頭を伏せる。
岩が崩れるような音、何かと激しくぶつかる衝撃が、大きな迫力で伝わる。
ようやく静まり、シンは立ち上がって辺りを見回す。
潜水艦には傷一つついていなかった。それどころか表面の錆や傷が消え、先程よりも光沢が鋭くなった。
不思議に思ったシンだが、潜水艦の周りには自動的に球状のバリアが張られていた。
そのバリアは、街を覆うドームと非常に良く似ていた。泡でできているようだがとても強力で、水や危険物を通さず潜水艦を守った。
気がつけば、艦内の照明やライトも灯っていた。
潜水艦が前に進んだのは、シンが誤って操縦桿に触れていたからだった。
「壊れていたかと思ったら、まだ動くんだね……本当に不思議な潜水艦だな」
気を取り直して操縦席に座り、シンはアクセルを踏んだ。
「発進!」
掛け声とともに、窓越しの周囲の景色が、風が吹くようにまっすぐ速く流れ出した。
シンは乗り物を運転した経験がないので、最初こそ操縦には不慣れだった。
ぎこちない動きばかりで時々壁にぶつかったり、うっかりドリルを出してしまって壁を壊したりもした。そんな時もバリアが自動で張られたので潜水艦は無傷だった。
何度も何度も岩に衝突を繰り返して、徐々に感覚を掴んでいく。
操縦に慣れるにつれ、障害物をうまく避けられるようになり、岩にぶつかる回数も減っていった。
ドリルの扱いにも慣れ、最後は勢いよく岩壁を壊す。大量のがれきが豪快に崩れ落ちてゆく。
少しばかり破茶滅茶な操縦ではあったが、何とか空洞を脱出し、洞窟の出口近くまで到着した。
結局、門限にだいぶ遅れてひどく叱られ、明日のおやつは抜きにされた。
それでも、空洞に閉じ込められて死ぬよりはマシだった。
その夜、シンは夢を見た。
今日見つけた潜水艦に乗って、憧れの__海の上の世界を目指す夢。
朝になり、目が覚めたとき、シンの頭の中に素晴らしいアイデアが浮かぶ。
「あの潜水艦に乗って、海の上の世界に行こう!」
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