◆パパとママは希望もくれた
安心して居られるおうちも、優しいパパもママも、ほんの一瞬の大地震ですべて失った。
昨日まではいつも通りに、心安らげるおうちで大好きなパパとママと過ごして、学校では遊んで勉強していたのに。
「パパ、ママ……うぅ」
シンの心の中は、真っ黒に染まった。
強い悲しみの黒だ。
言葉では言い表せないほど、すごく苦しくて、すごく悲しくて……何もかも虚しく思え、もうこの世から消え去ってしまいたいような……言葉では言い表せないけど、すごく辛い気持ちだった。
「パパ、ママ。これから……どうしたら、いいの……」
シンの両目から、一粒だけではあるが大粒の涙が溢れ落ちる。
長い時間シンはずっと泣いた。その後一旦気分が落ち着くと、持っていたお気に入りの本が涙で濡れていたことに気づいた。
本を開くと、表紙だけでなく中身のページまで湿り気を帯びていた。
「こんなに、濡れちゃった……」
しかし読みづらいというわけではなかった。自分でも気づかないうちにシンは本が描く海の上の世界に没頭した。
きれいな夜空の写真を見ると、自然と心まできれいになってくる気がした。
慣れない環境の中で家や家族のことを思い出すたび、シンは泣きそうになった。
こんな時にはお気に入りの本を読むことで、不思議いっぱいな海の上の世界にはまり込む。同時に、パパとママの温もりに触れて、悲しみを紛らわそうとした。
寂しくて辛い生活が続いたが、パパとママがくれた本を夢中で読んでいる時は、悲しい気分を忘れられた。
未知の世界への好奇心、知らないことを知りたい気持ち。そして、海の上の世界へ旅立つという、夢。
それこそが、シンの生きる原動力、そして希望へ変化したのであった。
「パパとママがくれた本、一生大事にするよ」
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