第30話 番外編 アンジェリカの恋
私は公爵家一人娘のアンジェリカ。幼馴染のウィルといつも一緒。
生まれた時から知ってるの。お母様たちがいとこ同士だから。
ウィルのお兄様たちはちょっと意地悪だけど、ウィルがいるからいいの。
勉強が始まっても、いつも一緒。ウィルは頭がいいので、私の勉強も見てくれるのよ。社交の練習が始まっても、ダンスのお相手は、いつもウィル。上手なの。
お茶会でいろんな子に話しかけられるけど、並んで座るのはいつもウィルと。
ウィルも女の子たちに話しかけられるけど、、、きっと私のところに早くいきたいなあ、って思ってる。銀色の髪は朝日のようだし、瞳の菫色は何色より好きだわ。
学校が始まっても、送り迎えはいつもウィル。
髪がうまく巻けない時も、にこにこして待っていてくれる。お昼ご飯も一緒。
クラスも一緒。これは私も頑張った。ウィルと同じクラスになるように。
屋敷に帰ってからも、宿題は一緒にやるのよ。そして、お茶の時間。
15歳になって学院の高等部に通うようになっても、ウィルと一緒。
15歳からは屋敷での公務の勉強も始まったけど、ウィルと。
このままずっと一緒かと、何の疑問も持たなかったんだけど、、、
16歳の私のお誕生日に、、、婚約の申出が、、当然来るだろうと思っていたのに、、来なかった。
ウィルからは。お花とカード。え、と、、婚約指輪とか?ウィルの色のネックレスとか?
他には来た。まあ、いろいろと、たくさん。いらないけど。
社交界にデビューした時も、、え、と、、エスコートとか?ウィルの色のドレスとか??父にエスコートしてもらった。
ウィルは御令嬢に囲まれている。隣の集団はハル様かしら?どうでもいいけど。
2年生になって、揃って生徒会に呼ばれて、まあ、送り迎えと、公務の手伝いと、、相変わらずだったけど、、、
なんか、、、急に、、、どう接していいかわかんなくなっちゃったわ。
ガーデンパーティーの前に、一人でナタリーの学生協の売店をのぞいてみる。お店の係りのルーさんに、相談してみようと思ったのは、、、知り合いじゃなかったからかな?
「・・・じゃあ、貴方の瞳と同じ色のピアスがありますよ。プレゼントしてみては?日頃の感謝よ、、って。」
なんか、、、考えてもみなかったな。こげ茶の短い髪のルーさんは、にこやかに笑って言う。
「・・・想いがいつか、届くといいですね。」
プレゼント、、、いつも手作り品だったわ。ぬいぐるみとか、、瞳がブルーの。
最近は父にこき使われているから、執務室で使う座布団。ハンカチ、、ウィルの頭文字入り、、、あら、実用品ばかりだったわね?
思い切って、日頃の感謝よ!と、渡してみたら、ウィルは目を真ん丸にして驚いて、、、ありがとう、って言ってくれたわ。にっこりする笑顔も昔から好き。
で、実は僕からも、、、って!!!
真珠に小さなアメジストが付いているネックレス!!かわいい!!うれしい!!
学院のガーデンパーティーにつけていったわ。ウィルもピアスを付けてくれてる。
ほら、みなさん、見て見て!お互いの色を身に着けているのよ私たち!
と、、、、思っているのは私だけらしい。景色が見えなくなるほど男子生徒に囲まれる。まあ、、、笑うけどね、、失礼のないように。
3年生の侯爵家の次男坊が、、グイグイ来る。こいつだけは絶対無理!
この茶髪野郎は、うちのお茶会に招かれたときに、、、なんと、ウィルに、、お茶を替えさせたのよ!従僕かと思ったよ、って笑ったのよ!!怒り心頭の私に、、ウィルが、主催者がお客様を不愉快にしてはダメですよ、って諭したの。もう、、、泣きそうだったけど、、、
疲れるわ、、、これも、まだ私の婚約者が決まってないからなのよね、、、ウィルを目で探してみると、、相変わらずかわいい女の子たちに囲まれてる。にこやかに笑って、、、、さすが、ウィルね、、、もう一つの集団は、、、どうでもいいか。
気分転換に席を外して、受付しているナタリーの席まで避難する。
ナタリーは、、、このネックレスを誉めてくれたわ。そうなの。大事なものなのよ。
6月に私の誕生日があるので、、部屋に次々と贈り物が運び込まれる。これを、、、一つ一つ開封して、返事のお手紙を書く、、、正直めんどくさい。ウィルには、、あんまり見せたくないし、、、これはいつも私一人でやってる。
ウィルは当たり前のようにお父様が連れて行ってしまったし。
ひょっとしたら、、、ウィルのプレゼントも紛れ込んでたり、、、しないわよね。
・・・何個かめのプレゼントを開封していたら、、、来た、、あの茶髪野郎の、、、
絶句するほどのプレゼントだった。ちょっと、、、物凄いネックレス、、、
次の日に生徒会室に持ち込んで、ナタリーに見てもらう。
本物なら3億ガルド、、、?はあ?
婚約の申し込み?、、、来てたわ、、、お父様のところに、、、
真贋の鑑定をハルが頼んでくれるというので、玄関まで見送る。はあ、、、
その日の帰りの馬車は、お通夜みたいだったわ。
ウィルは何も話しかけてくれないし。まあ、、、すごいネックレスだったね!とか言われても返答に困るけど。
これで決まりかもね、なんて、ナタリーに言われて、、、ほんと、泣きそう。
お父様はお前の好きなように、って、言ってくれるけど、、私の好きな人は、、、何も言ってくれないんだよね。
はあ、、、もう無理かな、、誰か、適当に見繕って婿を取るしかないのかな?ウィル以外?考えたことなかったなあ、、、あのネックレスも、ほんの社交辞令だったのかな、、、
ウィルは、、、本当に、、私の面倒を見ているだけなんだわ、、、お母様に頼まれて、、、
何も話さないまま、屋敷についてしまったわ、、、もう、今日は、部屋に帰って泣くんだ。
「送ってくれてありがとう、、、今日は、、もう、いいわ」
「・・・・・」
だんまり?まあ、、、いいわ、、
一人で降りようと立ち上がったとき、手を掴まれた。
「・・・・・?」
「アン、、、僕は、、伯爵家の三男なんだ。」
「・・・・・」
知ってる。
「僕は君に並べるように、急いで身を立てようと思っているんだけど、、まだ、、道の途中なんだ。」
「???」
「それで、、、なんの約束もできないんだけど、、僕の気持ちだけは、伝えておきたいと、、思って」
手渡された小箱を開けてみる。
ネックレスとお揃いのデザインの、、イヤリングと、、指輪、、、
「アンジェリカ、僕は、、ずっと、君だけ愛してるよ。」
「え???」
「あんなに大きな石は、、贈れないんだけど、、、」
*****
その後、ウィルを引きずって、お父様の執務室まで連れて行った。
「お父様!私、ウィリアムと結婚いたしますわ!!」
お父様は、、、もっとびっくりするかと思ったけど、、もちろん、反対なんかしたら許さないけど、、
「・・・ああ、やっとかい?ずいぶんとかかったね?書類は揃えてあるよ。明日にでも出そう。」
と、、、笑った。え?・・・・
そう!私、婚約いたしましたの!!
お相手はウィリアム。とても素敵な方ですの!!
成金男爵令嬢は借金返済中 風子 @kazeko
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