第13話 あと770万ガルド

さて、秋の生徒会主催の舞踏会も無事終わったので、これで今年は穏やかに終わるかと思いきや、、、12月に王城でちゃんとした?舞踏会が開催されるので、2.3年生はまだまだ落ち着かないらしい。


ま、私は通常業務。先日の舞踏会の会計報告書を作り、事業報告書を作り、、、

合わせてそろそろ自分の店の年末決算に向けての準備も始める。学生協と、下町の店の分。学生協の店はルーが完璧に帳簿を付けているので問題ない。そういえば、、、

持ち手に絵を描いたガーデニング用のスコップを実家に送ってみたら、なんと!絵柄付きと七宝焼きの2種類の試作品が先日送られてきた。ちょっと、負けた気がして悔しい。本格的に売り出すのは春からとして、サンプル品をまた、ハル様のおばあさまにクッキーのお礼にプレゼントした。

「スコップばかりそんなにあってもしかたないだろう?」

ですよね。でも、悔しいけれど、、すごくいい出来上がりなんです。うちの職人さんたち凄い!


「・・・そういえば、、ようやく裁判が終わったらしいぞ。」

「ああ、、副長官の?随分時間がかかりましたね。」

「ことが、、国税庁内のことだけに、、プライドがかかっているからな。徹底的に調べつくしたらしい。まあ、また、まねされても困るからな。刑は、重い。処刑だそうだ。」

「・・・・・でしょうね。」

「ジェイムズ商会は解体された。かなりあくどいことをしていたようで、余罪が山のように出てきた。解体時に押収された蓄財で、返済できるところには返済するらしい。本人は国外脱出する直前につかまり、終身刑だそうだ。」

「・・・・・」

「おまえの言っていた通り、あの女は事情聴取されたが、お咎めなしだ、、なんかな。」

「・・・・・」

「副長官の財産は、破綻していた。使用人もほとんどいなかったらしい。屋敷も抵当に入っていた。そんなにしてまで、な、」

「そんなにしてまで、、、守りたかったんですかねえ、、、恋ってやっぱり怖いですねえ。」

「・・・そんなもんばかりじゃないだろう?」

「アン様たちの恋は、、ちゃんと自分の立ち位置を確認しながらはぐくんでいるでしょ?まあ、普通はそうなんですが。自分の立ち位置を見失うのって、、、それが怖いですね。」

「自分の、立ち位置ね、、、」

「・・・・・」



後ほど追加された公告では、国税官及び地方税務官は、結婚が奨励されたらしい。

変な男や女に引っかからないように、らしい。

「おお!兄上に教えて上げなくちゃ!」

「なぜだ?」

「ああ、、、言ってませんでしたっけ?うちの兄は、うちに来ている国税官のお姉さんにプロポーズし続けてるんです。3年任期なので、もう終わりだ、と泣いていましたから。ぷぷっ。」

「あの、やたら厳しくて、家にも泊まらず、食事もとらず、贈り物も受け付けない、って人?」

「そうなんです!ずっと手紙を書いてましたが、開封前に燃やされているでしょうね。顔を見るたびにプロポーズしていましたが、黙殺されるので。」

「・・・それって、どうにかなるのか?」

「どうでしょうね?うちの家族は、なんていうか、、、変なんですよ。ふっ。おかげで、いいレターセットがたくさんできました。」

「・・・・・」


お前もいい加減、変だもんな。



*****

12月の王家主催の舞踏会は、年内最も大きいものらしく、国外からの来賓や、主要な役人や、爵位に係わらず国に貢献した商人や、もちろんほとんどの貴族が集められる。デビュー前の御令嬢も、婚約者が16歳以上なら出席できる。大変賑やからしい。警備も大変だな。

「お前の家も、一応、貴族だろう?」

「・・・はあ、、多分、一度も来たことないと思いますよ。聞いたことないし。」

「へ??」

ああ、おじいちゃんが平民の時呼ばれたって聞いたな。断り切れなかったらしい。

「ああ、、、」

「ハル様もお忙しいのでは?お相手の方にドレスとお花を、、、」

「ああ、ハルはねえ、踊らないで有名なのよ。あなたもデビューしたらわかるわ。

むっすりしてて、怖いのよお、お相手いないし。ねえ、ウィル?」

「アン、、、怖いとか言ったらダメですよ。確かに、踊っているところは見たことがないですが、、、」

「今回はハルが来年18になるのを見越して、沢山来るわよおーーー!国内はもちろん、国外からも。みんなに狙われてるのよ!」

「うへえ、、選びたい放題ですね?」

「そうそう!まさにそうね!!今回で決まりかもねえ。」

「おお!おめでとうございます!!」

「なにがだ!!」



*****

「お前は、12月は国元に帰るのか?」

「そうですねえ、学院も休みになるし。1年生は何にも関係ないし。ルーのアカデミアも早々に休みに入るらしく、帰るって言ってましたから、私も帰るかな。その前に、商工会と税務局にちゃんと売上申告はしますよ。」

「ふううん、、」

ひそひそ声で話す。閲覧室の窓からの景色も、冬らしくなってきたな。そろそろ雪がちらつきそう。

「休み明けの試験勉強もしなくちゃだしね。2.3年生は忙しいですね。社交に、勉強に、、、」

「まあ、、、そうだな。」

「ハル様、、、ちゃんと晩御飯忘れずに食べるんですよ。」

「うん。」

「たまに散歩もしたほうが良いですよ。日に当たるのは大事ですから。」

「・・・うん。」

「それと、お昼寝もするんですよ、、寝不足での判断は間違いやすいですからね。」

「・・・・・お前は俺の母親か!」

しーーーーっ

大きな声を出すと、つまみ出されますよ。

「・・・そういえば、眼鏡の1年生は来なくなったな、ここに。」

「ああ、、、ほら、キャサリンちゃんが可愛らしい成績なので、付きっ切りで勉強を教えていますよ。ふふっ」

「・・・俺も、、お前の勉強見てやってもいいぞ?」

「いえ、結構です。家庭教師が優秀なので。」

「・・・・・」







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