第12話 まだ780万ガルド

10月末の生徒会主催の舞踏会は、王城のセレモニーホール貸し切りで、滞りなく行われた。

私は何時ものように制服に生徒会の腕章を付けて、受付に徹した。

アン様は薄い菫色のドレス。銀糸の刺繍が映えて、とてもきれい!

ウィル様は濃紺の上着に金糸の刺繍。タイは水色。ああ、二人共ほんとに素敵です。

ハル様は、、、黒地に光沢のある薄茶の刺繍。意外と渋い。

「・・・誉めてるのかな?」

「あ、、、はい。」

ハワード君を目で探すと、、、おお!栗毛色の髪の令嬢をエスコートしているじゃないか!!良かったね!ハワード君!

「お前は、、その、、、良かったのか?」

「何がですか?」

「いや、、、ほら、、、あの眼鏡の1年生、、いつも一緒にいたんだろう?」

「へ?そんなこと言ったら、ハル様ともいつも一緒にいますけど?昼休みも、放課後も。最近では休みの日までうちの店にお昼寝に来てくださって、、、、はあ、、、」

「なにが、はあ、だ!屋敷に居たら昼寝もできない俺にちょっとは同情しろ!」

はい、はい。お忙しくて大変ですねえ、、おかげで最近はまた、色つやお戻りで。

ああ、美人美人、、、

「・・・・・」

「ハル様、全員お揃いになったようですよ。始めてください。」


2.3年生は社交界デビューを済ませているので、さすがに場慣れしているな。

1年生も張り切ってドレスを新調したり、プレゼントされたり、、、初々しい。

その中でも、生徒会役員のあの3人は別格で目立っている。

何時ものように長い話とかの後に始まったダンスパーティーでも、さすがに以前のようにアン様とウィル様にグイグイ来る輩はいない。アン様、ロンググローブにつけた指輪が可愛いです。ハル様の周りは相変わらずお花畑だ。

受付の机にスケッチブックを広げて、ひたすらスケッチする。

あ、そうそう、あのアン様にグイグイ来ていた茶髪野郎は、、、おお!可愛い彼女をみつけたみたいだ。

みんな収まるところに収まって良かったね。


夜は更けていく。


*****

次の日はさすがに寝坊した。休みでよかった。


ルーはとっくに国立図書館に出掛けてしまったらしい。

簡単に身支度を整えて、ブランチを食べ終わると、さて、開店。

オープンの看板を出して、薄いカーテンを開く。もうすぐ11月になる。風はさすがに初冬、って感じだね。

ささっと掃除も済ませ、小さいストーブにかけたお湯が沸いたので、お茶の準備をし、今日読む本を机に置くと、、、来た。図ったように。

「いらっしゃいませ。」

「うん。」

「お茶にしましょうかね。」

二人でお茶にする。なんだか、日常になってしまったな。お湯がしゅんしゅんと湯気を上げる。

「・・・今日はおばあさまに、、クッキーを持たされた。」

いつものクッキーだね。お皿に盛りつけて一枚頂く。

「お昼ご飯は食べたの?」

「うん。」


お茶を飲んで、クッキーをつまんで、お客様用のソファーで横になると、あっという間に眠ってしまったようだ。そっとブランケットを掛けて、テーブルに戻って本を開く。静かな午後だ。





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