第24話 幼馴染も互いのすべてを知っているわけではない
というわけで。
澄玲ちゃんにブラの付け方を教えてもらいました! あたし似合うブラとパッド?を選んでくれたので、胸も大きくなったよ! どうして、澄玲ちゃんがいろんなサイズの下着を持っているのかはわからないけど、まなちゃんは難しいこと考えません!
「とっっっても良くなったわ!!!」
「……嬉しいです」
「それじゃあ、めぐみさんのところに戻りましょうか」
もうだめだ。あたしは完全にまなちゃんになってしまいました。だってね、さっき鏡で見たあたし、めっちゃ可愛かったんだもん。メイドカフェにいたら普通にテンション上がるレベル。はあ。
「2人ともお疲れ~。お、まなちゃんもっと可愛くなったね!」
めぐみちゃんにさっそく可愛いって言われちゃった♡ まなちゃん嬉しいな~。
「……それにあたしより胸ありそう」
ガチトーンの村間の嘆きで、俺も一気に我に返ってしまった。いや大丈夫よ。俺の胸は
「えっと、村間が一番似合ってるぞ?」
「ほんと⁉」
「ああ、間違いない」
これは慰めではなく、まじの本音だ。もちろん、澄玲は美人だし何でも着こなせる。けど、似合うという観点では、間違いなく村間が一番だ。なんというか、村間のやや幼い顔は、フリルの衣装に合うんだろうな。なお、言うまでもなく俺は論外だ。男にメイド服が似合うはずがないだろ。おかしいのは鏡の方だ!
「せっかく3人で着替えたことだし、一緒に写真を撮らない?」
「うん! 撮ろ!」
「えっ?」
またも澄玲の提案に村間が乗っかり、俺は断れない空気。いやまあわかるよ? みんなでかわいい服着たから写真撮りた~い、っていう気持ちは。ゲーセン行った時、プリ機に女子高生が行列なしてるのを何度も見たし。そして、その間をすり抜けて太鼓を叩きに行く俺。
でもな、どうかわかって欲しい。黒歴史が目の前で形になっていくこっちの気持ちも。泣きそう。
「まなちゃん早く!」
気づけば2人は既にスマホを構え、身体を寄せ合っている。仕方がないので、俺も村間の隣に座った。
すると、俺の肩に手が回された。柔らかい感触にドキッとしてしまう。スマホの画面にはメイド服の3人……頭おかしくなりそう。
「はい、チーズ!」
ああ、撮られてしまった。くそ、みんな可愛いな。一番右のやつが俺だなんて信じたくもない。
「次はめぐみさんとまなちゃんで撮りましょうか」
「げっ、まだ撮るのかよ」
「せっかく可愛いんだからいいでしょ」
可愛いければ何でも許されると考える俺の幼馴染。もうやだ。可愛いの嫌い。
「ふふ、まなちゃんのメイド服、やっぱり可愛いな~」
「そんなこと……」
「めぐみさん、スマホ借りるわね」
「うん! まなちゃん、一緒にハート作ろ」
「お、おう」
勢いで、ハートの右半分を担わされてしまった。どうせこれも可愛く撮れちゃうんだろうな……。ああもう、恥ずかしいよお。俺、ちゃんと男だよね?
「うん、撮れたわ」
「わ~い。見せて見せて~」
すぐさま村間が写真を確認する。俺もその後ろからぬるっと覗く。はい、普通に可愛いです。顔は良いわ胸はあるわスカート短いわで、『残念、実は男でした~』的なトラップも成立してしまいそう。そんな展開やだ。
「めぐみさん、私のスマホにも送ってもらえるかしら?」
「うん、もちろん!」
「いや、あのできればそれは……」
「送ったよ!」
はあ、わかってたよ。止めても無駄だって。でもね、自分の黒歴史が目の前で送信されるのを、黙って見ていることなんてできないの。
「……まだ届いてないみたいね」
「ほんと? あ、送り先間違えちゃった」
「おい! 何やって……早く取り消せって」
「ごめんね。うわあ、もう返信来ちゃった」
「終わった……」
短い人生だったなあ。女装癖のある男って誤解されても生きられるほど、俺は強くないんだ。みんな、今までありがとう。
「……念のために聞くけど、誰に送った?」
「んっとね、寧々ちゃん。♡だけ返ってきたよ」
「そうか」
「と、とりあえず友だちの写真だよって返しておくね」
「おう……」
「ほら、寧々ちゃんもまさか真那弥くんとは思わないだろうし。お出かけでばったり会った時もばれなかったじゃん! きっと大丈夫だよ」
「……任せた」
そうだ、まだ終わったと決まったわけじゃない。清水さんが俺だと気がつかない可能性だって十二分にある。いや、むしろこの女の子を見て久遠真那弥とわかる方がおかしい。どこからどう見ても女の子……うう、また恥ずかしくなってきた。
俺、男なのに……
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