第19話 幼馴染が隣にいるのにナンパするバカがどこにいる!

 引き続き、あたし、久遠まなはめぐみちゃんとお出かけ中!

 現在はサン〇オショップに来ています。


 まなちゃんね、サン〇オショップに物申したいことがあるんだ。あたしサン◯オのジュ〇ルぺ〇トってキャラクターが好きなんだけど、グッズが全然ないの!!! ほんとひどいよね~。一時期けっこうはやってたのに。


「わあ、懐かしいキャラがいっぱーい」

「そうだねー」

「まなちゃんは好きなキャラクターいるの?」

「う、うん。たくさんいるよー」


 ……ええっと、時々正気に戻ってしまうのですが、この状況大丈夫ですかね? ここ、結構小さいお子様も来ているのですが。わたくしが男であることがばれたら、通報されませんかね。

 とりあえず、なるべく危険を回避するため、奥へと進む村間から離れて店の端へと移動する。うん、ここなら大丈――


「あれ、お姉さん。一人ですか?」


 お姉さんって……俺⁉ まじかよナンパかよ。警戒しつつ、振り返ると……うわ、最悪だ。

 郷田龍哉である。クラスメイトに遭遇するとはなんたる不運。もしここで俺の女装がばれれば、明日にはクラス中に広まってしまう。それはなんとしても避けねば……。声を出すと気づかれるので、俺は全力で首を横にぶんぶんと振った。


「あ、お友だちと来てるんですね。それにしてもお姉さん、めっちゃ可愛いですね。良かったら連絡先で――」


 バチンッ。


 美しき平手打ちが、郷田龍哉にお見舞いされる。彼の幼馴染の清水寧々だ。二人で来てたのか。……おい、幼馴染とのデート中にナンパするなよ。


「ごめんなさい、うちの馬鹿が」

「イエイエ。ダイジョウブデス」

「……あれ? 失礼ですが、どこかで会ったことありましたっけ」

「ナイトオモイマスヨ。ホホホ」


 やばいやばいやばい。ばれるってこれ。


「あ、いたいた。まなちゃん、どこに行って……あ、寧々ちゃん! やっほー」

「やっほー、めぐみちゃん。この女の子、めぐみちゃんのお友だち?」

「う、うん。そうなの。最近知り合ったんだ~」


 清水さんは俺と村間を交互にじろじろ見る。そして、納得したように頷いた。


「ふ~ん、そういうことね」


 なになにどういうこと⁉ まさかばれてないよね? え、ないよね???


「あ、えっと、そろそろあたしたち行かないと。またね寧々ちゃん!」

「めぐみちゃんまたね。デート楽しんでね!」

「う、うん。……まなちゃん行くよ」

「ワカッタ」


 いま清水さん、って言った? 俺が男ってばれた? ということは俺が女装癖持ちだと勘違いされた? 違うから! これは無理やりやらされてるだけで、俺はこれっぽっちも喜んでないもん!


「寧々ちゃん、気づいちゃったかな?」

「……気づかれてないことを願うわ」


 でなければ、俺の高校生活が終わると言っても過言ではない。あの頷きはどんな意味だったのだろう……。ああ、どうかばれていませんように。


※※※


 一通り(村間と澄玲が)楽しんだので、最後に澄玲の家に訪れた。もう、早くあたしを男に戻して!


「いい写真がたくさん撮れて良かったわ」

「ほんと! 見せて見せて~」


 って、写真撮られてたのかよ。ということは、まなちゃんという存在は永久に残り続ける……なんということだ。

 そんな俺の不安をよそに、キャッキャウフフと盛り上がる女性陣。よほどまなちゃんが気にいったらしい。何も嬉しくない。


「あのう、とりあえずメイクを落としたいのですが……」

「え、落としちゃうの? もうこのままでいいんじゃないかしら。とっても可愛いわよ」

「はははは、ご冗談を」


 恐ろしいことを言い出す俺の幼馴染。その冗談まじで笑えないからな。そろそろ真那弥に戻らないと、俺の心までまなちゃんに……


「まあいいわ。洗面台に案内するからついてきて」


 髪に付けられた大きなリボンを取り、ハーフツインになったウィッグをはずし、プロが施したメイクを落とし、ピンクの可愛いロリータ服からいつものユニ◯ロ服に着替えると、やっと俺は、久遠真那弥に戻った。賢者タイムに伴う羞恥心がやばい。うう、俺はなんて格好で外を……。誰だよ、まなちゃんって。


「そういえば澄玲ちゃん、絵は描かなくてよかったの?」

「ええ。2人を見てたらインスピレーションが沸いたわ。今夜はとっても良い絵が描けそう」

「ふふふ。澄玲ちゃんのお役に立てて嬉しい」


 まあ、2人がこんなに喜んでくれたなら良い……わけあるか。二度とごめんだ。女装の俺でインスピレーションを沸かしてんじゃねえ!

 でも。

 郷田に可愛いって言われた時ちょっとだけ、ほんのちょっとだけドキッとしたんだよな。


 もしかしたら、新たな性癖を開いてしまったのかもしれない。


――――――――――――――――

2500pvありがとうございます。


皆さんはまなちゃんのこと好きですか……?

私は大好きです。





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