第10話 幼馴染は他の友達に違う顔を見せている
放課後。
例によって俺は、カフェでBlackなCoffeeを優雅に飲んでいる。
前方には女子2人。左の村間は、ホイップクリームとキャラメルソースがたっぷりかかった茶色のドリンク。右の澄玲は、いちごミルクのみならず、イチゴのパフェまで注文している。
あの……2人とも、昨日スイーツバイキングに行きましたよね? まだ甘いもの摂取するの? そういえば、JKのデザート用の別腹は、育ち盛りの運動部男子よりでかいと聞いたことがある。じゃあ余裕か。
「難しいわね、幼馴染」
パフェのイチゴをパクパクと食べながら澄玲が言った。そういえば、昨日もイチゴのケーキばかり食べてたな。よほど好きらしい。
「まあ、普通は昔からの繋がりで自然に形成される関係だからな」
この間まで何の接点もなかったのに、急に距離を詰めてもカップルにしか見えんというのは当然だ。もっとも、幼馴染に周りからの承認が必要なわけではない。昔からの知り合いであることを何らかの事情で隠している、という展開はラノベでも普通にあるしな。だが、カップルに思われるのは不都合だ。澄玲と結んだのは幼馴染契約あり、恋愛契約ではない。
「幼馴染、とまではいかなくとも、せめて友だちくらいには見られたいよな……」
「その事なんだけどさ」
いつものようにホイップクリームを左頬につけた村間が言った。
「なんだ?」
「あたしにも手伝わせてくれないかな?」
手伝う……そうか、そうなのか。村間もついにその気になってくれたのか。信じていたよ俺は、初めて出会ったあの日から。村間めぐみこそが幼馴染にふさわしい、と。ただ、
「安心しろ。すべての幼馴染を、俺は幸せにしてやるか――」
「そうじゃなくて!」
俺の言葉を村間が遮る。なるほど、そうじゃないのか。それはそうと、その頬をぷくーっとさせるのかわいいな。クリームついてるから余計に。
「外で遊ぶとき、あたしも誘ってくれないかなって……」
「村間を?」
「う、うん。ほ、ほら、3人でいたらあんまり変な意味に取られないかなって。もちろん、あたしは幼馴染にならないけどね」
幼馴染になる。改めて考えるとなかなかのパワーワードだ。それを実行しているのが私たちなんですけど。
「……どうかな」
「いいと思うぜ。余計な邪推をされない方が、幼馴染関係に集中できるからな。澄玲はどうだ?」
「もちろん構わないわ。だけど……村間さんは私と一緒でもいいのかしら? この間は強く言いすぎてしまったし……」
「うん! むしろ一緒がいい!! 澄玲ちゃんの自分を曲げないところ、あたし本当にすごいなあって思ってるよ」
「そ、そうかしら」
澄玲がわかりやすく照れている。意外と褒められ慣れてないのかな。なんにせよ、仲良きことは美しきかな。
「てことでさ。今週末3人でお出かけしようよ!」
「村間はどこか行きたいところあるのか?」
「え? いや、それはまだ考えてないけど……」
出た、ありがちなやつ。遊びだけ誘ってその先を考えていない。永遠に遊びの予定が立たないリスク大だ。もちろん、みんなの意見も聞きたいという気持ちはよーくわかる。だが、できればどんなことしたい、くらいは考えておいてくれると、こちらも意見を出しやすくてありがたい。
「それなら私、やりたいことがあるの」
無から有を提案する澄玲。さすがは俺の幼馴染だ。
「お、なんだ?」
「村間さんのお洋服を選びたいの」
「え! あたしの……?」
驚き過ぎて村間はグラスを手にもったまま固まっている。たしかに急な提案だ。女子の友人関係はよくわからないが、服を選びたいと言われる機会は、なかなかないのではないだろうか。
「駅前に大きなビルがあるの、わかるかしら?」
「うん。知ってるよ」
「そこの4階にある……」
「あ! 可愛いお洋服の!」
村間も知ってたのか。たしかにあの店目立つもんな。ロリータ服がずらっと並んでいると、そこだけまるで異世界みたいだし。
「でも、あたしには似合わないと思うな。あたし澄玲ちゃんみたいに可愛くないし、子どもっぽいし……」
「……何を言っているの? 村間さん」
「えっ?」
澄玲は村間の両肩に手を乗せ、向かい合った。これは……水上澄玲のもう一つの顔、限界可愛い女の子オタクモードだ。
「すべての女の子は可愛いのよ!!! 村間さん!!!!!」
「えっと、あたしも?」
「もちろんよ!」
目がガチだ。ちょっと、いやかなり怖い。そういえば昔『♪女の子は誰も世界中でたった1つのジュエルよ』って、とあるティンクルなペットが教えてくれたな。やっぱり女の子ってみんなすごいんだ。男は虫けらだけど。
「村間さんなら絶対似合うわ。似合わないはずがない。私が保障する。すごくきれいな顔をしているもの」
「そうかな」
「そうよ。羨ましいくらい」
「えへへ」
村間めぐみの顔が緩んだ。ここに俺は、
そして次回。
村間めぐみがロリータ服に挑戦します。
――――――――――――――――
(めぐみちゃんのロリ服が気になる方は一つでも☆をくださると、私と私の脳内に住まうめぐみちゃんがとても喜びます……)
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