中心点:ミンちゃんの1次元探求

みっちゃん

打ち続ける点を極めた先に。

4畳半の部屋には、世界があった。壁は古び、窓からの光はわずかだが、ミンちゃんにとって、この小さな空間は宇宙そのものだった。部屋の隅に座り、彼女は紙の上にペンを置く。点を打つ。ただそれだけの行為に、彼女の全存在が集中する。


外の世界では、彼女のこの情熱は理解されない。学校では、他の子供たちが囁く。「変わり者」と。だが、ミンちゃんは気にしない。彼女には、自分の世界がある。ペンと紙があればいい。点を打つことが、彼女にとっての全てだった。


毎日、ミンちゃんは同じ試みを繰り返す。紙の中央に、できるだけ完璧な点を打つこと。何度も何度も練習を重ねる中で、彼女は気づく。この行為は、ただの技術の向上を超えたものだと。それは、自己と宇宙との対話だった。


ある日、彼女の部屋の隣に新しい隣人が引っ越してきた。隣からは、時々ピアノの音が聞こえるようになる。初めは、その音が彼女の集中を乱すと感じた。だが次第に、そのメロディが彼女の内面に響き、点を打つ行為に新たなリズムをもたらすことに気づく。


ピアノのメロディを背景に、ミンちゃんは紙の中央に点を打つ。今度は、何かが違った。点はただの点ではなく、彼女自身の一部のように感じられた。彼女は理解する。完璧な点とは、紙の上の単なるマークではない。それは、自分の内なる中心を見つけること。自分自身と調和することだった。


ミンちゃんは、もう外の世界の声に耳を傾けなくなった。彼女は自分の内なる声に従う。点を打つ行為を通じて、彼女は自分自身を理解し始める。そして、自分の世界が他人に理解されなくても、それでいいと受け入れる。


物語の終わりに、ミンちゃんは紙にもう一つの点を打つ。この点は、これまでとは異なる。完璧さを超えた美しさがある。それは、彼女が自分自身を見つけ、受け入れたことの証だった。紙の上の点は、彼女の旅の終わりを告げるものではなく、新たな始まりの象徴だった。


ミンちゃんの1次元探求は、外見上は孤独に見えるかもしれない。しかし実際には、彼女は自己の深い理解と世界との調和を見出した。そして、最も大切なことは、真の美は完璧さではなく、自己表現と自己受容にあるということを理解したのだ。


「中心点」は、ミンちゃんの静かながらも力強い旅の物語である。自分だけの道を見つけ、それを信じる勇気。それが、彼女が私たちに残した最も大切なメッセージだ。

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中心点:ミンちゃんの1次元探求 みっちゃん @bosanezaki92

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