第10話 思い出 4
◆ ◆ ◆
いつしか、わたしは彼女を捕まえることを諦めていました。
それをいいことに、彼女はお茶やお菓子を持って、まるでピクニック気分でわたしのところを訪れるようになっていました。
「近々、わたしは現在の警備任務を解かれることになりました」
彼女の手の中で、ペットボトルがペキ、と音を立ててへしゃげました。
「それって、あたしのせい……?」
自分のせいで、わたしが解任されたと思ったのでしょう。あれだけ自分勝手に振る舞いながら、こういうときはおどおどする様子が、見ているこちらとしては面白くもありました。
「いえ。あなたのことは、不思議なことに問題視されていません」
「なら、いいけど……え〜じゃあこうやって会うのも今日で最後なの?」
名残惜しそうな彼女の横顔に、わたしは口元が緩みました。
ほんの少し前、彼女と出会う前なら、こんな回りくどい会話はできなかったでしょう。
「明日から、学校ですね」
わたしのつぶやきに、彼女は一瞬怪訝な顔をして、それから寝転がって愚痴りました。
「そうね〜、はぁ、面倒くさい……」
わたしは立ち上がってスカートについた土を払うと、夏草に寝転がる彼女に言いました。
「また明日」
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