第6話 思い出 2
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「あなたに会いたかったから」
毎日のように、わたしは彼女を捕まえて、追い払いました。
最後は必ず捕まるのに、どうして毎回危険を冒すのかと訊ねたわたしに、彼女が言ったのが最初のひと言でした。
意味不明でした。そんなにわたしと面会したいのなら、正規の手続きを踏んでくれと、わたしは彼女に告げました。
「馬鹿ね、それじゃ面白くないじゃない」
彼女の言うことが、当時の私にはこれっぽっちも理解できませんでした。
ただ、何故かそのとき、アイリスリットがかすかに震えたことを憶えています。
それはきっと、彼女に対する興味が芽吹いた瞬間だったのでしょう。
この世に生を受けまだ間もなかったわたしには、複雑な感情を理解する力が不足していました。
「照れてるの?」
茶化すような彼女の問いかけに、ふと頬を触ってみました。ほんの少しだけ、表面の温度が上がっていることが確認できました。
にやにやと笑う彼女が憎らしくて、けれど「憎らしい」という気持ちの対処がよく分からず、わたしは黙ったまま彼女を引っ張っていきました。
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