第15話 資料⑪:遺書
これが誰かの目に触れていると言うことは、私は既にこの世にはいないのだろう。
どうかその「誰か」が神在教関係者でないことを祈る。
私はこれまである女に囚われ、自由の効かない身となっていた。ヤツに拐かされ、弱みを握られ、従うしか無かった。妻は初めからヤツに心酔していて、私の言葉に耳を貸そうともしなかった。
でもヤツも人の子。病には勝てずに、死んだ。私は一時の自由を手に入れた。この機会に全てを捨てて逃げようとしていた。
だが、叶わなかった。妻によってヤツは不完全ではあるが蘇った。信じられないかも知れないが、ヤツは生き返ったんだ。私はソレを見たとき底知れぬ絶望を感じた。
それからの日々は地獄だった。また私はヤツに虐げられ、非人道的な行いに加担させられた。妻はそれを手助けするために変な宗教を立ち上げて教主になった。私には止められなかった。止める術が無かったんだ。
そして明日、私はヤツの贄となる。反抗的な私はヤツらにとって邪魔なんだろう。私は今、贄を閉じ込める地下牢の中で密かにこの手紙を書いている。
私の言うことが信じられないかも知れない。気の触れた狂人の戯れ言だと思うかも知れない。でもこれは、事実だ。今この世界で起きている異常なんだ。教団には近づくな。教主に近づくな。石に、近づくな。
教団の壊滅と、ヤツに二度目の死が訪れることを願っている。
川西武尊
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