第9話 資料⑦:教団周辺住民の証言②

 ・・・なんだ、アンタまだいたのか。

 話せることはもう話しただろう。とっとと帰りな。

 ・・・なに? ここらに伝承やら伝説はないかって? どうしてソンなこと聞くんだ?

 ほー、アンタ、オカルト記者なのか。少しでも雑誌に載せるネタが欲しいと。

 ・・・まあ、在ることにはあるが、そんなたいした伝説じゃないぞ?

 ・・・それでもいいのか? じゃあまあ、大雑把に教えてやるよ。


 その昔、ここら辺の土地の女どもは子宝と安産を祈願して「子守石」ってのを抱いてたんだよ。発祥とか起源は分からんが、なんでも人の命ってのは女の腹の中にいる九ヶ月そこらでは完全には育たないんだと。だからまずはこれから授かるであろう子の命を天から石に降ろして世話をする。そして命がそれなりに育てば石から女の腹の中へと自然に移って、そうして女は妊娠するって伝承だよ。1960年頃までやってたみたいだが、科学が発展して、若いモンがいなくなるにつれて廃れていったみたいだな。それからは安産祈願の神社として実際に使われてた子守石を本尊とした子守神社ってのが村の外れにできたんだが・・・。

 十年ちょっと前くらいに本尊の石が盗まれちまったんだよ。神主の婆さんが朝見に行ったら本堂の扉が壊されて石だけなくなってたんだと。あん時の婆さんの怒りようといったら、まんま鬼みてえだったさ。

 ん? その神主に話を聞きたいって? あー、それがさ、もう死んじまったんだよ。その婆さん。

 って言うのもその神主の婆さんってのが、さっき話した死んだ婆さんなんだよ。村で祀ってた石がなくなって、その後に婆さんが変な死に方をしたんだ。ここら辺の奴らは「石を盗んだのもアイツら教団だ」って言ってるよ。俺もそう思ってるけどな。


 ・・・とまあ、話はこんなもんだ。満足したか?

 

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