第16話 恋占いなのです。
すると恵ちゃんが顔を上げた。
「あれ?
大吉さん、早かったですねっ」
「早かった?
そんな訳ないだろうが」
俺は時計を見る。
俺が保健室へ行ったのはもう十五分も前の話だ。
「お楽しみかと……。
あ、今は聞かないでおきますねっ」
「な、なんのことだ?」
俺はそう答えたが、嫌な予感がしていた。
なんせこいつは神様なのだ。
もしかしたら透視能力なんかも持っているかもしれない……。
「それよりも、
なにやってんだ?」
俺は話題を戻す。
この一列に並んだ連中相手に、
恵ちゃんがなにをやっているのか気になって仕方ない。
「占いです」
「占い?
なんのだ?」
「もう、
大吉さんってホントに野暮なんですねっ。
高校生と言えば青春時代の代名詞。
そして青春時代と言えば恋の代名詞。
みなさん、大いに恋をしてラブラブになってくれたら、もうこれ以上の幸せはないですっ。
これは昔から決まり切ったことじゃないですかっ?」
「あ、あのなあ」
「あ、
なにをするんですっ?」
俺は、
有無を言わせず恵ちゃんの手を取って、廊下へと連れ出した。
俺は思う。
確かにこいつの言うことは間違いない。
だが新入学早々で、
まだ隣の席のやつの顔と名前が一致する前から恋占いなんかしてどうなるっていうんだ?
「なんで、
今、恋占いが必要なんだ?」
「えーっ、盛況なんですよっ。
みんなどんな相手と相性がいいか知りたいじゃないですかっ。
もしかしたら私の占いがきっかけで、
ホントに恋人同士が成立するかもしれないんですよっ」
「どうしてそこまで面倒を見る必要がある?
恋なんて当事者同士が悩んだ結果、告白して成立すればいい話だろうが」
「あー、大吉さん、
もしかして嫉妬してますっ?
意中の女の子が、
別の男の子に取られちゃうんじゃないかと思ってるでしょ?」
――ごつん。
俺は、
恵ちゃんの頭にげんこつを落とした。
「うー。な、なにするんです。
これが神様相手にする仕打ちですかっ?」
「神様なら神様らしく恋占いなんて営業をかけるんじゃなくて、
拝みに来た相手の恋を成就させるのがふつうだろうが」
「うー。大吉さん、ひどいですっ。
前に言ったじゃないですか?
私を拝みに来る人なんて減っちゃったってこと。
……だからこっちから営業をかけて、
さっさと恋人同士になってもらって作るモン、作っちゃって欲しいんですっ」
「作る?
なにをだ?」
俺はさっぱり意味がわからなくて尋ねた。
すると恵ちゃんがニヤーッと笑う。
「あー。
大吉さんてニブいです。それとも奥手なんですかっ?」
「はあ?」
俺はやっぱりわからなくて尋ねていた。
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