第17話 子宝の神様なのです。
「もうっ、私から言わせるんですかっ?
……恥ずかしくて困っちゃいますっ」
恵ちゃんは妙な
意味わからん。
俺はもう一回ごつんとやろうとして手を上げた。
「はあっ、わ、わかりましたっ!
い、言いますっ、言いますからっ……」
頭上を手でクロスさせて防御しながら、
恵ちゃんは叫んだ。
「なにを作るって?」
俺は改めて訊く。
すると恵ちゃんはため息まじりに呟くように言った。
「赤ちゃんですっ。
決まってるじゃないですかっ」
「ば、……ば、馬鹿な」
俺はいきなり赤面してしまった。
真っ昼間からで、しかも学校の廊下で話題にするものじゃない。
「……だから大吉さんは奥手ですかっ? って尋ねたんですっ。
……私は子宝の神様なんですよっ」
「む、むう……」
俺は唸った。
確かにその通りだった。
あ、いや、迂闊だったと言えよう。
こいつの目的は最初から決まっていることに、改めて気づかされたのだ。
「……あ、待てよ。
……ってことは、ひょっとすると?」
俺は嫌な予感がしたのだ。
考えてみればこいつは神様なのだ。
もしかしてとは思うが念のため確認してみるとしよう。
「……コホン。
あのな、保健室の一件、知ってるか?」
俺は話題変更を装って、
さりげなく尋ねた。
「あ、バレちゃいました?
ちょっとさりげなく澤井さんに念力送ってみちゃったんですっ。
効き目ありましたかっ?」
――ごつん。
俺の拳が再び恵ちゃんにヒットした。
恵ちゃんは頭を抱えた。
「うーっ、痛いじゃないですかっ!
……なにするんですかっ」
「当たり前だ。
……それに河合さんの件も、そうだな?」
すると恵ちゃんは、そっぽを向いて口笛を吹き始めた。
心なしか音程が外れている。
なんか必死にごまかそうとしているのが見え見えだ。
俺はまたしても拳を構えた。
「わーっ、わ、わかりましたっ!
私ですっ、私がやりましたっ!」
俺は少しかがんで、
背の低い恵ちゃんと目線の高さを合わせた。
「なーんでかなー?」
「……だ、だから、
……私は大吉さんに幸せになって欲しいんですっ。
赤ちゃんをいっぱい作って欲しいんですっ」
「……だから俺に、
次々と女の子と接近するイベントを作ったのか?」
「はいですっ」
俺は、はーっ、とため息をもらした。
するとそれが意外だったのか恵ちゃんが不思議そうな顔になる。
「ど、どうしてですかっ?
……澤井さんも河合さんも、美人でかわいいじゃないですかっ?」
「そー言う問題じゃないっ。
彼女たちの人権はどうなるんだ?」
すると恵ちゃんは、ニヤーッと不敵な笑顔を見せた。
なんだか嫌な予感がする。
「ほーっ、そう来ましたか?」
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