第14話 意外と大胆なのです。
「ふーん、やましいことね?」
河合さんはなにやら、
楽しげな顔になる。
「……保健室で二人きり、
そしてベッドの側にいる。
ねえ、もし私が来なかったら加茂君は澤井さんのベッドに入っていたんじゃない?」
「げ、げほげほ」
俺はむせた。
そのときだった。
「キャーーーッ。
……な、なんで加茂君、こんな側にいるのよっ」
いきなり澤井さんが俺を突き飛ばす。
するとキャスターがついている椅子の乗っている俺は、
押されるままに床を滑る。
「あわわ……」
バランスを崩した俺は、
椅子から落ちそうになり必死にしがみつく。
すると行き着く先は河合さんの前だった。河合さんが俺を受け止めてくれたのだ。
「お願い、二人とも出て行ってっ」
ベッドの上で頭を抱えて、
澤井さんが叫んだ。
「おい、
いったいどうしたんだよ?」
俺は、
さっきまでとは態度がまったく違う澤井さんに戸惑って尋ねた。
「私、調子が悪いの。
お願いだから」
俺は河合さんと顔を見合わせた。
すると河合さんが頷いたので俺は椅子から立ち上がった。
「わかった。
じゃあ具合が良くなったら教室に来てくれ」
俺はそれだけ言うと、
河合さんと保健室を出たのであった。
「なにがあったの?」
俺と並んで歩く河合花菜さんが尋ねてくる。
「言っても信じてもらえないような話」
「ふーん。
興味あるわね。まさか澤井さんから誘ったとか?」
「……げほげほ」
俺はむせた。
するとしてやったりとした笑顔で河合さんが見る。
「やっぱりね。そんな気がしたんだ」
「なぜわかる?」
「うーん。
君はそんなに大胆な性格じゃないから」
「なら、
澤井さんは大胆な性格なのか?」
「知らないよ。
でも女の子っていざってなると意外と大胆だから」
そう言うと河合さんは俺の左手を握ってきた。
少しひんやりとして柔らかく小さな手だった。
「……どう?」
俺は冷や汗が出てきた。
出会ったばかりの学級委員と手を握って廊下を歩いている姿なんぞ、
誰かに見られたら上手い言い訳なんかできそうにもない。
「ど、どうって?」
「私、
なんか加茂君に興味がある。これって異性としての発言だからね」
「はあ?」
俺は、
なんだかまたやっかいなことになりそうな予感がしてきたのであった。
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