第25話 パーティでの初依頼。
それから宿で朝食を済ませてから僕とエリーゼは冒険者組合に向かった。
パーティ名とリーダーを登録するためと、もちろん依頼を探すためだ。
担当した受付嬢はマリーさんだった。
「はい。ではパーティ名は『ひとつの足跡』でリーダーはエリーゼさんですね」
「はい。それでお願いします」
僕たちが同意するとマリーさんが受理して処理してくれた。
僕とエリーゼの冒険者組合の札にはランキングだけじゃなくてパーティ名も記載されたのだ。
「今日は登録だけかしら?」
マリーさんが札を僕たちに手渡しながら訊いてくる。
「依頼も受けようと思います」
僕はそう返事するとエリーゼも頷く。
「掲示板で見繕ってくるわ」
エリーゼがそう言い残して受付を去ったので僕も付いていくのであった。
「Dランクの依頼で大丈夫かしら?」
「はい。大丈夫です」
僕がEランクなのでエリーゼが気を使ってくれたようだ。
だけどBランクのワイバーンと戦った経験があるのでDランクなら大丈夫じゃないかな。
「……オークの依頼はないわね。肉も売れるからお金になるから人気なのよね」
言われて僕もDランクの掲示板を一通り見たが確かにオークの討伐依頼はなかった。
「……あるのは、ゴブリンね。どうやら集落が見つかったらしいわ」
「ゴブリンの集落ですか?」
「ええ。数はだいたい30から50匹くらいね。街道からそれほど離れていないから旅人が襲われる心配があるわ」
「じゃあ、それでお願いします」
僕たちはそしてゴブリン討伐の依頼を受けた。
場所はこのイチバーンメの街から街道を歩いて2時間少々の距離の森だった。
「知ってると思うけど、ゴブリンはそれほど知恵はないけど集団で襲ってくるから囲まれたら危険よ」
「はい」
そしてエリーゼは歩く足を止めて僕をじっと見た。
「あと、……ゴブリンは女性を狙ってくるから私のことをよろしくね」
「女性を……?」
僕は意味が分からず問い返してしまう。
「ゴブリンはオスしかいないのよ。だから他種族の女性を攫って孕ませて種族を増やす魔物なの」
「……うわ」
えげつないと言うか残酷と言うか。
そういう生物なのだから仕方ないとも言えるが、人間としては天敵だな。
「わかった。エリーゼは僕が守るよ」
「ふふふ。お願いね」
エリーゼはにっこりと微笑んだ。
きれいな顔だと改めて思う。
そして僕たちはゴブリン討伐の依頼票を持って受付窓口に並ぶのであった。
■
それからイチバーンメの街の門を潜り街道を2時間くらい歩いた。
道のりは快調で空は青く、白い雲がぽっかりと浮かんでいる。
なんともお気楽な気分だった。
そして僕の横にはエリーゼがいる。
笑顔を見せてくれているけど、耳をピンと伸ばし警戒を怠っていないのがわかった。
「時間的にそろそろだね」
「そうね。あの森が目撃情報があった森だと思うわ」
エリーゼが指差す先には濃い森が広がっていた。
街道は森を迂回するために曲がっているので先が見えない。
「こういう場合、森に入った方がいいのかな?」
「森の中に集落が作られている可能性が高いわね。でも目撃されたのは街道だからこのまま道を進みましょう」
そういうことで僕とエリーゼは辺りに視線を巡らせながら街道を進む。
そしてしばらくしたときだった。
「待って。音がするわ」
エリーゼがその狼獣人特有の尖った耳をピクピクと動かして僕にそう告げた。
「音? ゴブリンの?」
「なにか争うような音ね。あとたぶんゴブリンの鳴き声もするわ」
「大変だ。急ごう」
「そうね」
僕たちは駆け足になった。
森で視界が遮られている街道は曲道になっていて先が見えない。
おそらくたぶん、その先になにかある。
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