第18話 魔法使用で怒られました。

 

 なんて他人事のように見ていたら、マリーさんが振り返った。

 そしてエリーゼさんと僕を指さして手招きをする。




 うん。僕たちも来いってことね。

 ざんねん。しっかり見られていたようだ。




 そして僕とエリーゼさんも小部屋に入ったよ。

 そこには対面に置かれたソファとテーブルがあった。

 壁にはちょっとした絵画とかも飾られているから、冒険者組合員たちからの聞き取りだけじゃなくて、接客とかにも使われる部屋なんだろうね。




 そして『怒涛の波濤』のリーダーがソファに座らされ、その正面に僕とエリーゼさんが座った。

 マリーさんは椅子を持ち出して僕の左側に座る。いわゆるお誕生日席だ。




「まず経緯を説明してください」




 マリーさんはオーガ般若顔の怖い顔のまま口を開く。




「……ちょっと勧誘してただけだよ」




 バツが悪そうに口を尖らせてスキンヘッドのリーダーがつぶやく。




「ゼッツさん、またですか?」




 どうやらリーダーはゼッツと言うらしい。

 そして常習犯だと言うこともバレているようだ。

 マリーさんがため息混じりに言う。




「そういう訳です。もういいですか?」




 理由は判明したことでエリーゼさんがマリーさんに許可を求めた。

 もちろん退出してもいいでしょ? と言う内容だ。




「ゼッツさんたちは厳重注意。また組合事務所で揉め事を起こしたら減点ですから」




「……ぐ。……わ、わかったよ」




 ゼッツは悔しそうにそう呟く。

 仕方ないよね。嫌がる女性に無理やりだもん。自業自得だよ。




「わかりました。ではエリーゼさんは帰っていいわ」




 言われたエリーゼさんは立ち上がり僕に手を振りながら部屋を去る。




「ゼッツさんはこの誓約書にサイン」




 マリーさんが一枚の書類をゼッツに提示した。

 ここからでは内容は読めないけど、二度と騒ぎを起こしません的な誓約書なんだろうね。そしてゼッツは渋々とした表情でサインを終える。




「じゃあ、ゼッツさんも帰っていいわよ」




 言われたゼッツは立ち上がり不満そうな表情を見せながらも部屋を去るのであった。




 そして残されたのは僕ひとり。

 あれ……?




「あの~。僕は……?」




 尋ねるとマリーさんが笑った。

 いや違う。笑っているけど目が笑ってないんだ。

 なにか怖い。




「マキラさんはなにか言う事があるわよね?」




「な、なんでしょうか……?」




「使ったでしょ?」




「使った……?」




「魔法。使ったでしょ? さっき」




「……あ」




 ……げ、バレてーら。

 マリーさんは見ていないようで僕がゼッツに魔法を使ったのを見ていたようだった。




「組合事務所内での魔法は一切禁止です。もちろん罰則もあります」




「……ば、罰則ですか……?」




 な、なんだろう……?

 減点? 罰金……?

 やだな。まいったよ。




「――ですが状況から判断するにエリーゼさんを守るために発動させたのは明白なので、今回だけは不問とします」




「……た、助かったあ」




「いいですね。次回からは支部長案件になりますからね」




「はい。すみませんでした。気をつけます」




 僕は平謝りしたよ。

 なんどもなんども頭を下げた。

 そして僕も開放されるのであった。




 ……あ、採集したポーション草の提出忘れてた。

 まあ、明日でいいか。




 開放された僕は気分も明るく冒険者組合の事務所を出るのであった。

 すると通りで僕に向かって手を振る女性がいた。エリーゼさんだった。




「あー、すっきりした。あれ、マキラ君がやってくれたんだよね?」




 さっきの転倒魔法のことだろうね。




「はい。迷惑でしたか?」




「そんなことないよ。また助けられちゃったね。で、どう? これからなにかいっしょに食べに行かない? 私、おいしいお店知ってるよ」




「行きます」




 もちろん張り切って返事をしたよ。

 獣耳美少女からのせっかくのお誘いだもんね。

 僕がそう答えると狼美少女のエリーゼさんは耳をぴくぴく、尻尾をふさりと動かした。

 うーん。かわいい。


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