第20話 窓辺のショー

 あまりにもこの場所が殺風景なので、以前からの趣味であった樹脂粘土で作った人形をいくつか踊り場の窓辺に飾って見た。掃除のときに置き換える週替わりである。ミニショー劇場である。

 もちろん他人に上げる場合は人形が変化しないように引導を渡してあげるようにしている。


 仕事の話を進めている他社の営業の人が、楽しみにしていますよ、と感想をつぶやく。


 フロアを占めている奥の部屋に住んでいる女性から、話においでよとオファーが来た。

 日本に滞在している油絵を趣味とするカナダ人のサッカー選手である。彼女の油絵もギャラリーに並ぶようになった。


「狙い通りですね」

 Tちゃんが厭らしい笑みを顔に浮かべながら言った。自分ではそんな表情を浮かべていることに気づいていないのだ。

 何が狙い通りだ。お前は毎日をこんなゴシップだけ探して生きているか。

 下衆め。下らんことを考えるぐらいなら技術書の一冊でも読んで自分を高める努力ぐらいしろよ。このヤプー。

 こういう人種に会うといつもこう思う。だが言わない。言っても憎まれるだけで何にもならないからである。


 彼女とはときたま話をしたが、チームを移籍してどこかに消えてしまった。油絵を描くのが趣味であった彼女が残していった絵は、今でも自分の部屋に飾っている。

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