第10話 田舎の日常
田舎に住んで見て、初めて判ったことが幾つかある。
一つ、農作業の機械は騒音の塊である。
これらの機械には、防音とか静音という概念はまったく入っていない。そのため、恐ろしく遠くで使っていても、ひどくうるさい。
一つ、田舎の人たちはよそ者を嫌う。
これは借りた家付近限定かもしれない。大家さんは山奥からの移住組である。ダム建設の代替案としてこの辺りの土地を譲り受け、移り住んだのだと言っていた。移住はもう二十年も昔の話であるが、まだ余所者扱いされていた。当然、その余所者の家の一部に間借りした我が家も余所者である。
一つ。カラスは田舎でも幅を効かせている。
見張り役のカラスに襲われた。ロングヘアを頭の後ろで縛ると、カラスに襲われるとは後で知った。
一つ。田舎は結構危ない。
深夜にどこかから「助けて~」と女性の悲鳴が。闇の中をうかがってみると、車が一台慌てて発進していった。事件の詳細は未だ不明である。
ただそれでも、田圃にも良い所はある。
深夜、水を張った田圃の中の道を帰るとき、風も雲も無い星空ならば、一時の間、自転車を漕ぐ足を止める。
頭上に広がる星空に呼応する水面の映し星。ここは鏡の世界。
もはや上も下も無く、虚空にただ一人、星と共に浮かぶ。
何という孤高の贅沢。
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