帝国に至る基盤
海域に浮かぶ諸島の地理的特徴
これから人類史上で随一の繁栄を築いた大帝国の歴史を紐解くにあたり、まずはその国の地理的特徴について記しておきたい。というのも、偉大なる帝国が帝国たりえた所以は、往々にしてその地理的な恩恵に浴する機会を得ていたためである。
たとえば7つの海を支配した大英帝国が帝国たりえたのは、かの国が周囲を海に囲まれ、ローマ人、ゲルマン人の侵攻以来外敵の侵入がなく、その分軍事的な領土獲得よりも交易による利益の確保に対して貪欲であったことが大きい。
オークィンズ帝国の地理的特徴は、アースにおける日本、フィリピン、イギリスと比較的類似した性格をしている。
詳細は海域略図を参照されたい。
帝国は六つの州に分けられた。それぞれ北から、
北部州(アプファーレク[apfârökh])
北東州(ユルャーキィ[eurjaky])
北西州(イフシアーゴ[ifsiagö])
南東州(オイドラン[höedran])
南西州(ナークリークス[narchliegs])
南部州(ヴェトビア[vethbia])
とよばれている。
オークィンズ帝国は大小約8000のオークィンズ諸島からなるが、これらの島々はその大きさによって「本島」「
帝国において本島は北部州の中核となるアビシャグ[Abisiag]島、および南東州の中核となるヨアブ[Joab]島の二島のみである。帝国の首都パルケオイゴ[Parquéeugo]はヨアブ島西岸に建設されていたため、ヨアブ島は南東州の中核かつ帝国の商業・産業・政治・文化・学問全てが集まる島であった。
中島は六島存在する。北西州のアドニア[Adonya]島、北東州のヴェナヤ[Venaya]島、南東州のツァドーク[Zadook]島、南西州のザブド[Saboude]島およびアーヒァ[Achia]島、さいごに南部州のシャファト[Chapatt]島である。
中小島に分類されるものは九島ある。北部州のナポルト[Naport]島、北東州のギレルド[Girerdo]島、北西州のエクロン[Eclone]島、バル[Bal]島およびセヴーブ[Sevoub]島、南東州最南部のエンゲディ[Engedy]島および北部のベロッタ[Belotta]島、南西州のアラバ[Alaba]島、さいごに南部州のエスカリオ[Escalyo]島である。
これ以外の島々はすべて小島に分類される。
このように大小さまざまな島から成り立つ島国であることは、人類がこの土地に入植したそのとき以降、外洋航行可能な船やその操舵技術が必要不可欠であったことを意味している。帝国が滅びて久しい今でもなお、造船・航海士といった船舶関連の職業に就く者はオークィンズ海域出身者が多く、また帝国の解体によって建国されたアプファル共和国の造船技術はテルにおいて随一とされている。
帝国は南北に長く、ハクチョウを頭部が下向きになるように倒して描いたように、島嶼部が連なっていた(このため現代においてオークィンズ諸島は「水鳥諸島」と呼ばれることもある)。南部州最南端(北緯27.3度)から北部州最北端(北緯38.2度)まではおよそ距離にして1440km程度である一方で、東西方向は約980km程度である。国土の総面積は約35.5万平方キロメートルであり、アースに存在する同じ島嶼国の中では、日本が37.8万平方キロメートル、フィリピンが約30万平方キロメートルと、比較的近い面積規模の国土を有している。
ざっくり言うとそのうち約75%が山地、残り25%が低地・丘陵地である。山地は非常に傾斜がきつく、同時に谷は深く削れている。このため人間が分け入って利用するのは困難であり、一部を木材や燃料として近隣の集落を中心に利用するに留まってきた。このため焼畑農業によって森林が焼失したり、これにともなう水害・土壌流出によって土地が荒れたりすることはなく、ナラ、カシ、クス、ヒノキなどの豊かな照葉樹林を、人間の定住以降全国的に維持している。
低地には山地から運搬された粒の細かい土砂が堆積しており、全国的に肥沃な耕作地として利用されている。こうした豊かな土壌を苗床として、ネジマキカホン[Oryza retorta]、アオイロコムギ[Triticum caerula]、トガリコムギ[Triticum oblongs]などが主要作物として栽培されている。このほかにも、マメ類、イモ類など痩せた土地でも栽培可能な植物が栽培化されており、国民の食糧や、家畜のための飼料として生産されている。
国土がこのような極端な割合となったのは、様々な方向からのプレートの動きによって急激に土地が隆起し、急峻な山地が形成されたためである。なおこうした土地の特徴については、地殻変動が魔法の源泉となる龍脈の形成にかかわっているため、後に詳述する。
オークィンズ帝国衰亡史:偉大な魔法国家はなぜ瓦解したのか 有明 榮 @hiroki980911
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