第3話

「はー

喰った喰った」


 3匹の、ネズミを丸飲みしたピールモレスが満足そうにお腹を撫でる。


「よく そんなの食べるわね」


 グロすぎて、直視出来ないわ。


「………? なに言ってんだお前」


 食事に、ケチをつけられムッとするピールモレス。


「まぁイイわ

にしてもデッカい魔王が ネズミ3匹って栄養は足りてたのかしら ??」


 魔王の、亡骸に視線を移す。

 ちょっぴり、哀れに思えてきた。


「全然 足りないよ

1日1食だしよ」


 少し、キレ気味に言うピールモレス。


「えッ

ダイェ………んなワケないわよね」


 魔王が、痩せる必要なんてないし。


「もっと 食べたかったろうにな

かわいそうに」


 また、泣きそうに鼻をすするピールモレス。

 忙しい人だね。


「そうよね

それで ここから出たいけど方法はあるの ??」


 早く、こんな陰気なところから出ないと。


「えっ

出たい?」


 ギョッとした、表情をするピールモレス。


「そうよ

食事に ネズミが出るだけなら すぐ餓死しちゃうじゃないの」


 もっと、グロいの出しそうだし。


「ここにいれば 身の安全は確保されてますがね」


 肩を、すくめてため息を出すピールモレス。


「そもそも 魔王がなんで牢屋に入ってるのよ ??」


 そこからして、おかしいよね。


「魔王様は この地に君臨し───」


「手短にお願い」


 話が、長そうなので短縮するように言うあたし。


「あーウッフエッヘン

平たく言えば 勇者一行に負けまして」


 すごく、簡単に説明するピールモレス。


「なんだ

ショボ」


 体が、大きいだけなのかも知れない。


「いいですか! 魔王様はぁ」


 語気を、荒げるピールモレス。


「それで どうなったの」


 魔王の、説明とかどうでもイイからつっこむあたし。


「はぃー

魔王様は 自身の城を奪われた挙げ句に地下牢に幽閉されることになって現在に至るところです」


 淡々と、話すピールモレス。

 最初から、そうしてよ。


「つまり 勇者一行は魔王を倒したけど殺せなかったから投獄したってことね」


 情が、わいたのかしら。

 おかしな話よね。


「はい そうなります」


 コクッと、うなずくピールモレス。


「要するに あたしは 牢屋に入っている必要性はないってことよね」


 なんで、卵から出たのかはとりあえず置くとして監禁されるいわれは無いはずよ。


「えっ

まぁ そうなりますが………」


 どうも、歯切れの悪いピールモレス。


「じゃあ 出るわ

すいませーん」


 外に、いるであろう人を呼ぶように大声を出すあたしに、


「ちょっ

あなた正気ですか ??」


 あたしの手羽先を、つかんで制止するピールモレス。


「なによ

止めないでよ」


 だんだん、イライラして来るあたし。


「一応 言っておきますが

あなたも魔王なのですよ」


 やたら、丁寧に話すピールモレス。


「だからなによ」


 あたしは、捕まる理由なんてないし。


「すぐ捕まって

この部屋より小さな部屋に押し込まれることになります」


 半笑いで、答えるピールモレス。


「なんでよー」


 おかしいじゃないのよ、そんなの。


「いいですか

外には 魔王を倒して名をあげようとするヤカラがわんさか居るんです」


 トカゲ男が、おそらく人差し指を上に伸ばして説明する。


「えっ

魔王だったら誰でもイイのね」


 無罪だろうが、魔王なら倒されるみたい。

 それって、おかしいよね。


「そうです

あなたから 魔王レベルの魔力がダダ漏れなのですよ」


 あたしを、ビシッと指差すピールモレス。


「つまり

いくら変装してもバレるのね」


 悩ましいわね。


「そういうことです」

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