第二話 カフェバーの初体験

 モテない三十路独身男に春が訪れたわけじゃなくてもおかしな状況で間違いない。


 いわゆるリアルJKで1ポイント。高偏差値お嬢さま学校TOP3で2ポイント。

いわずもがな美少女3ポイント。ギャルと委員長に金髪碧眼ロリ属性スリーカード。


 そう少女の妄想力……吊り橋効果そのまんま。もちろん東じゃないミナミだけど。



 裏ミナミでも夜間は人通りのない公園にいた理由は単純で女にダマされたらしい。

表向き真っ当なロック系のライブで声かけされた女たちに誘われる破滅のルートだ。


 破滅のルートなんて表現で収まらない奈落の落とし穴はそこかしこに用意される。

表を追放された裏社会ごとアンダーグラウンドの領域に潜ると罠は巧妙に築かれた。



 夕方から若者が集うロケッツで珍しいが深夜のDJタイムは問題が多々発生する。

心斎橋筋やアメ村のヒップホップ系クラブ闇パーティより近年カジノやスロットだ。


 声かけのキャッチを法規制で禁止された闇組織が減少しようと消えることはない。

地下より深い闇に消えた若者たちは暴対法が成立した現在まで増えつづける一方だ。



 表向き薬物を入手できないようでアングラウェブ上で隠語を利用できれば買える。

常連同士の口コミで拡散されることはリスクマネジメントの意味でも恐らく正しい。


 興味本位の軽い遊びから始まり徐々に中毒症状に染まると手遅れで抜けだせない。

アルコールとニコチンにギャンブルまでワンセットで表から裏に群がる闇の商売人。



 悪魔のささやき声ほど甘く優しく響き遊びの範囲を逸脱すれば人生はジ・エンド。



 今年初めに誕生したダンジョンも同様の理由で善悪が図れるような場所じゃない。

ゲームみたいなモンスターは現れず宗教的な意味で過去の創作物に類似の怪物たち。



 ダンジョンが与える【試練の時】自体が超えられない高すぎる壁にして罠だった。



 それでもダンジョンで得たスキルを異能に変えることで人類など軽く凌駕できる。

世界から争いをなくすためにダンジョン内にあるかもしれない可能性が頼りになる。



 そのために世界で徹底した情報共有化を図りスキル保持者の育成が優先されて──

居抜き物件に元から用意された最奥部のステージで熱く語るアイドル系のイケメン。



「もちろん宗教観や肌色と人種の違い。思想と教育の差から表向きに広められない。

それでも価値観合わせと情操教育……いずれ国境を消し去りたいのが世界の共通解」


 その言葉が遠い昔……机を並べた同級生ジョウくんの口から放たれる衝撃の極み。

もちろん狭さを感じさせない客席を見回すと呆然と見つめるだけの子どもが際立つ。



 残念すぎるおしらせになるが言葉の真意を理解する人間は半数に満たない現実だ。



 今日は週末の日曜日で……事前に調整して実務を入れず西区の靭公園を訪問した。

いきなり予定外の三人が朝から事務所に来襲して仕方なくみんなでメトロに乗った。


 生まれ育ちや年齢が近そうで遠いはずの少女たちは思いの外……仲よしに見える。



 まずはオレ筆頭にして初見であるゲストの三人娘。雑居ビルオーナーの佳二くん。

一階の玄関口カフェバーは『Fish・On』経営者の大喜多要さんが先輩らしい。


 もちろん男子校時代の名残もない肉体改造を終えた美女はカミングアウト済みだ。

彼女の相方でもある料理人がオナベさん亮くんで美男美女カップルにしか映らない。


 調理場内で見え隠れする補助役の美少女が「調理師免状持ち」杵築ミナミちゃん。

彼女自身が知能指数でボーダー上にいる訳アリらしいから専門家として助言したい。


 佳二くんから姉の長女で姪っ子になる英田永依ちゃんはピンク髪ギャルの空手家。

祖父が与党副総裁で両親揃って弁護士らしいが本人はやはりボーダーラインにいる。


 そんな彼女と佳二くんがダンジョンで見つけたウサ耳少女が宇佐美ココちゃんだ。

驚きしかないが公園ベンチに捨てられたミニウサギから進化した唯一無二の獣人族。



「ミナミの夜は大活躍でしたよねぇ。キャリア警視で要先輩の部下になる姫宮です。

なんか高校時代あなたも後輩だったとお聴きして笑いましたよ。今後ともよろしく」

 わざわざ直近まで近づいて挨拶された相手はヤンキー連中を抑えたスーツ女性だ。


「こちらこそよろしく。あべのマルシェで障がい者福祉事業所経営の高坂明士です」


 逃げようとしたバカ野郎は永依の回し蹴りとココのパンチでダブルノックアウト。

準構成員じゃなかったが半グレ団体にメスを入れるきっかけに繋がると感謝された。


 他にも関係者は多数いて医学者から弁護士にパチプロと幅広い人脈が集うらしい。

事業所に近い大阪公立大学附属病院勤務の医学者や看護師さんは仲よくしたいんだ。



 広い意味なら母校である府大と市大が合併して生まれた大阪公立大の付属病院だ。

障がい者福祉業界と医学は切っても切れない関係で今後のためになる可能性はある。


 互いの仕事で有益になり今後の「障がい」治療と解明に生かせるなら本望だよね。

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