第一章 幸せってマジでなんやねん?

第一話 リアルと幻想の境界

 ごく平凡な一家に生まれ大阪の隅で育った子ども時代から目立つのが苦手だった。


 それなりに勉強していればそこそこの成績を残せたから気楽な選択肢で進級した。

市内で仏教系の名門と呼ばれる私立高から府立大に現役入学して無事に卒業できた。



 無難な人生を求める家族に逆らうことなく商社マンとして忙しい日々に追われた。

二十代に見えない青ざめた顔とやせ細った身体に鞭打つ仕事の終わりが病院送りだ。


 エリートの道を邁進する長男と下の妹に邪魔だからと縁を切られ会社を退職した。

なにもかもを失い未来が見えなくなって初めて空の青さと世界の広さを理解できた。



 そこそこの金銭だけ手元に残り自由気ままな生活でやりたいこともないタイプだ。

深くつき合わないが人当たりのいい性格で長年の知人に勧められて船旅に出奔した。


 いわゆる有名すぎるぐらい知名度が先行する180日間で世界を一周するアレだ。


 いい意味で逆の立場から見た世界の広さより狭い国民性と息苦しさが嫌になった。

無知の知……だったかもしれない。金銭と生命の天秤から対等と呼べない子供たち。



 聴きとれる言葉が正論にしても心には一切響かない主義主張を掲げた反体制組織。

それでも自由の意味をはき違えた権力闘争の果てにできた右でも左でもない社会だ。


 ラクに生きようと考えた人生が望んだ結果とは程遠くても這い上がるのは厳しい。

一度刻まれた悪い意味の烙印はどれだけ消そうとどこまでもつきまとい束縛される。



 今後は考え直して生きようとしても選択肢が存在しなくなり手遅れに近い状態だ。



 それでも人として生きるため……最低限の金銭を稼ぎ自分で立てた目標を守った。

成り上がりたいわけじゃないし夢を追いかけて目に残る形で自分を残そうと決めた。


 ごく普通の人たちは幸せな家庭を築いて自分の遺伝子を繋ぐ子孫を残そうとする。

自分の切実な想いを文章で綴った書籍化で世界中に拡散して歴史に名前を残したい。


 家族を恨みたくないし理想と現実のギャップに疲れてサポートに回ろうと考えた。

最初から健常者と違うハンディキャップを抱えて生まれた人々の支援者になりたい。



 その結果が大阪あべの上町台地と西成飛田商店街を繋ぐ狭間ビルの福祉事業所だ。

もちろん介護福祉士を筆頭に必要な資格は取得して社員一名の合同会社で起業した。


 想いと願いに共鳴した名ばかり登録ヘルパーとして協力してくれた知人は若干名。

まだ府の許認可をうけて事業所登録を終えたばかりだから実績で存続が決められる。



 趣味か生きがいなのか自分で理解できない執筆作業はウェブのプラットフォーム。

古くは角川書店と呼ばれたKAKUKAWAが元締めになり次世代作品を募集した。



 メディアミックスを狙うカクヨムと呼ばれる創作者の集いで底辺から抗う日々だ。

冒頭から長い戯言申し訳ない……オレは高坂明士。次の十月七日で三十路を迎える。



 それなりに高い語学力とひょろい身体に合わない……関西人のはったりと持続性。



 どうも昔から感情の機微に疎いらしく次の誕生日には魔法を使えるかもしれない。

病院送りの直前まで睡眠時間を限界に削れたし栄養がある食べ物ならなんでもいい。



 残る最後の三大欲求。もちろん性欲は人並みにあるが相手がいなくても問題ない。

平たい話になるけれど創作者なら特有かもしれない妄想力と片手でどうでもできる。



「ねぇメージくん。あーしら放っといたまんまでニヤニヤ顔の妄想よくなくない?」

「本当ほんとホントにさぁ。あたしら次のバースデーで十八。成人なんですけど?」

「おバカ二人無視しちゃってくださいね。メージさんのお仕事ジャマしちゃダーメ」


 どこかがおかしい現状を喜ぶか悲しむべきか……逮捕されての前科はヤバいよね。

ギャルのリサちゃんマジメなエリちゃんはよくても金髪碧眼合法ロリ属性のマリア。


 いやいやいやホントに勘弁してください親公認どころか全員挨拶して頼まれたし。

四天王寺女子生活でお嬢度数が極まったから再教育してくれと強引すぎるご依頼だ。



 それでもダウト……こんな場面を見られたらお巡りの「逮捕だぁ!」案件になる。

それでも世間は広いようで狭い……窓外をお巡りさんが笑顔で手を振り素通りした。


 警察署に知人ばかりで交番所とご近所つき合い……銭形警部はフィクションです。



 一応の言い訳として……玄関扉を冷暖房時以外は半分近く開いて大きな窓もある。

キューズモールに直近でも人通りがないという立地条件……時たま歩行者が見える。


「三人とも……テスト期間だよね? 考えてわかんないぐらいなら見てあげようか」


「「「メージさん……わたしたちって校内成績トップスリーなんですけどっ!」」」


 ちょっと待て……それマジなら大学なんて赤門でもどこでも選び放題じゃねえか。

アニメじゃない……ゼータじゃなくてマンガじゃない全方向にスキなし美少女たち。



 ホントにほんと……クイズじゃなくて城くんハーレム回すコツをご教授ください。

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