第34話~初依頼~

まだ少し体の芯に余韻が残ってるよ

少しだけ痛むのが昨晩の出来事が夢でなかったことを教えてくれる

今朝は七海の胸に顔を埋めて迎えたよ

きっと失神に近く寝落ちした私を抱きしめてくれていたんだね


私が起きたのを感じ七海も起きる

「おはよう」

”う~ん~おはよう”

七海はベッドをスルリと抜け出るとベッドサイドテーブルの水差しからコップに水を注ぎもって持って来てくれたよ

上半身を起こして受取り一口飲む

昨晩はどれだけ声を上げてしまったのかカラカラだった喉に水が染みるよ

”ありがとう”

シーツを見るとわずかだけど血が付いてるよ

「痛みは大丈夫?」

”少しだけ・・・でも痛みがうれしいよ”

飲み干したコップを私の手から取りテーブルに戻し私を抱きしめる七海

唇を重ねられモーニングキスと言うには濃厚な時間を過ごす

お互いが満足して自然に唇を離す

「さあ準備しないとジルが来ちゃうよ」


お風呂で急いで体を洗うよ

外は何も変わって無いって分かっているけど

後に七海が来て手を腰に回してアソコを洗ってくれる

「わかるよ初めてのあとは触るのも少し怖いよね」

七海も同じ感覚になった経験あったんだね

”ありがとう”

少し涙声になちゃったよ

ゆっくり湯舟に浸かりたい気分だけど数分で上がって身支度開始


着替えが終わって呼鈴を鳴らすとしばらくしてナターシャが朝御飯の乗った押し車を押して部屋に入って来たよ

チラっとシーツを見た気がするがスルーしてくれたので何か一安心

ソファーのテーブルに朝御飯をセットしてくれたよ

”今日は食事を終えたら初冒険行くから帰れなくても心配しないでね”

「冒険者ギルドの依頼程度で御二人に私達が心配ですか!御二人には世界一似合わない言葉と思いますが」

マジでナターシャのリアリスト感が増してる気がするけど自分で道を開いていく姿に嬉しくだよ


「お出かけの後にお部屋は整えますので気になさらずに御出立くださいまさせ」

部屋を出るナターシャ

「これが彩美が言ってた定番朝御飯かな」

今日はオニオンスープにバケットだね

”うん日替りスープとパンに食後のコーヒーだけの素朴な感じでね”

あれ突然だよ七海のベーコンエッグを思い出して涙が

「私のはガイアに戻った時にいっぱい作るからさ」

七海が頭を撫でてくれたよ

以心伝心って魔力とか無くてもあるんだよ愛があればさ


朝食を終えコーヒーを持ってテラスへ

一服しながらちょっと打合せ

”金級の依頼が受けれるとなると設定が変わってなければ昇級対象の依頼があるはずなんだよね”

「依頼書には書かれてない条件でギルドの監視者が隠れてついて来て審査するやつだね」

”審査を通れば昇級なんだけど成果によって同伴者も金級依頼なんで白金に飛び級出来るチャンスだね”

「初依頼で飛び級かあ物語でも成功した冒険者いなかったよね」

”だから成功すれば世間に与える私達のインパクトはデカい”

「少しでも早く環境を整える為には無敵チートは隠さないで行くんだね」

”うん”

「やり過ぎないように力の調整が難しいね」

”そうだね・・・それと監視対象依頼となると人を殺める可能性は大きいけど”

「それは心決めてるから大丈夫だよ」

一服を終え口付けをして出発だよ


部屋を出て黒泉館の入口に行くとジルが待っていた

”おまたせー”

「私も今着いたところだよ」

冒険者ギルドまで三人並んでメインストリートを歩く

「何かギルマス面会を到着後にしたいって連絡あって」

「ギルマスの面会か銀級スタートの冒険者なんて聞いたこと無いからねギルマスも気になったかな」

”会ったことあるの?”

「御姿をお見掛けしたことはあるけど普通はギルマスに用事がある時は受付女経由だから話す機会はなかったね」

”何か緊張するなそれだと”

「なんか二人には緊張とか無縁に見えるけど」


「それで依頼なんですが」

「金級で選ぶけど簡単なの選ぶから大丈夫だよ」

”その・・・超高難易度でお願い出来ないかな”

「超高難易度って十人以上のパーティーでも苦戦するレベルだぞ」

「いずれバレるからジルには先に伝えておくね彩美は闇黒穴を使えるよ」

「ままマジか!?最上級闇魔法師でも過去に使えた者は僅かで今使えるのは王妃のルシファー様だけと・・・」

”信じられないかもしれないけど本当なんだ”

「まあ私に嘘を付いても何の価値もないから信じるよ七海もなのか?」

「彩美は旅してる間に闇魔法師と出会い色々教わう機会があって開花したけど・・・」

”七海の魔力は私と同等だけど光魔法師と出会う機会がなく基本魔法以外は学べてないんだ”

「闇黒穴を使える彩美と同じ魔力があるってことは二人とも称号級じゃないか」

”昨晩に私達の目標が名誉でも金でもなく上位を目指すってジルは見抜いてくれたから縁があると思って話したよ”


「縁か・・・そうだね何人も二人と同じ年頃の冒険者とも出会ってるけど娘を重ねた事はなかったよ何か娘が導いてくれたのかもね」

「私達の目的は依頼終えて一杯の時にゆっくり話すよ」

「なぜ昨日偶然に会った私をそこまで信じるの?」

私が少し前に出て振り返りジルと視線を合わす

私の目に何が見えたかジルが固まり驚きの表情になる

数秒で視線を外したよ

「ああ表現できないけど魂で感じたよ彩美の目には全て見えてるんだね」

”ごめんね怖い思いさせて”

「少し底知れぬ恐怖は感じたけど・・・とても綺麗な目に見惚れたよ」

”ありがとう”


そんな話をしていたら冒険者ギルドに到着

待っていたミナイに案内され建物二階のギルドマスター室へ

ミナイがノックをすると

「どうぞ」

少し低目の落ち着いた若い女性の声が返って来た

扉を開け部屋に入る

十畳位の部屋に見るからに高級そうなガイアでならマホガニー製に相当するかなのデスクセットと応接セットがあり窓と扉部分以外は本がギッシリ入った本棚が配置されている


ギルマスは黒髪で見た目は三十歳位かなスレンダーな色白美人だよ

受付所と同じ制服を着ていて左腕手首には水晶乃剣があるね

ネックレスに加工されて胸元に輝くメダルは水晶で窓から入る光で虹色に輝いてるよ

促されソファーに座る

ミナイは私達の後ろに立ってるよ

「私は闇の国冒険者ギルド支部で支部ギルドマスターをしておりますリナと申します」

”彩美です”

「七海です」

「さっそく聞くがユリネス王国など存在しない国を語り何がしたい?」

ギルマスレベルになると騙すのは無理だよね

私達の後ろにいるミナイが口を押え声が出るのを我慢してる

「あっ私なんかその同席していいんですか」

「二人担当のミナイにも今後関係する事だから一緒に聞いてくれ」


”やはりすぐに見抜かれましたね”

「それも織り込み済か」

「リナ様は私達をどう見てるんですか?」

「会うまで色々な推論をしていたが二人を実際に見て確証を得たよ」

コンコン

「どうぞ」

受付女の一人がコーヒーを三人の前に出して部屋を出て行く


リナはコーヒーを一口飲んで

「二人はガイアから来たのではないか」

”そう思われる理由をお聞かせ頂けますか”

「まずは肌だ」

「肌ですか?」

「メネシス人の少し硬く張りがある肌とは明らかに違う柔らかい肌は文献によればメネシス人とガイア人の外観で唯一違うヶ所だからな」

”ガイアの記録があるんですか?”

「ダブネスがガイアに落ちてから扉を使い調査に向かった者がおり僅かだが記録は残っている」

「まずはと申されましたが他にも」

「今話してる言葉だよ普通に会話してるように見えるが強力な念通を被せて会話を演じてるだけだ文字が読めないのは念通が通じないからだな」

「その確証はどのように」

ちょっと気にはなっていたんだけどリナの肩に託鳥が留まっているんだよね

託鳥はボイスレコーダの能力を持つ伝書鳩だよ見た目は小型の梟だけどね


リナが託鳥の頭を撫でると記憶していた内容を話し出す

<〇◇×☆〇◇×☆〇◇×☆〇◇×☆〇◇×☆>

<私は彩美>

<七海です>

<〇◇×☆〇◇×☆〇◇×☆〇◇×☆〇◇×☆>

<はい>

昨日に冒険者登録をした時の会話だけどミナイの話した部分が聞き取れない


「ミナイどうだ?」

「彩美さんと七海さんが話した部分が聞き取れません」

「最近は言った言わないのクレームも多いので受付での会話はしばらく託鳥で保存している託鳥でも念通までは覚えれなかったみたいだな」

”ここまでになると私達も正直にお話した方が早いですね”

「今すぐ冒険者を止めるのであれば罰する事はないが話をするという事は内容によってはを理解してるな二人を拘束するのは無理だと思うが」

”はい私達がガイアから来たのは間違いありません”

「信じられないかもしれませんが”この世界”は彩美が書いた物語が現実化したものです」

「突拍子もない話だな信じろとは無理がないか」

”趣味は冒険者に関係した文献の読書と言ってるけど本当の趣味は一人エッチで自宅の寝室棚にある隠し引き出しには色々な一人エッチに使う道具が仕舞ってあるとか”

リナの顔が突然真赤になる可愛いね

”ミナイは彼氏はいません!言っているけど実は皆んなに隠れてナ国にいる恋人と文通するが楽しみとか”

「えっなんで知ってるの!?」

「わかったが・・・私のはもう少しミナイが居てもで気を使ってくれても・・・」

”あっごめん!リナは出番が少なかったから本人以外が絶対に知らない話がこれしかなくて”

「ギルマス!私は何も聞いてません!」

「まあそうしてくれると嬉しいなミナイ」


「私も最初は信じられませんでしたがメネシスに強制転移させられた彩美から念通が来た時に確信しました」

「物語の話はとりあえず信じる事にする今後に色々と聞かせてもらいたいが」

”物語は世界が望んだ現実に化より既に私の手を離れ独自に歩み始めてる”

「世界ですか?」

”なぜメネシスが現実化されたのかは私でもわからない謎なんだけど色々な介入が統一された意思の元で現実化されている統一された意思を仮に世界と呼んでいるんだよ”

「あまり長くなるとジルに不信感を持たれるのも現時点では困るので二人の身元詮索はこの辺りまでにするが最後に冒険者に求めることを聞かせて欲しい」

”世界が私に求めたのは無関係のガイアを破壊する可能性があるダブネスの排除”

「世界と言うのが万能なら世界が消し去ればいいのでは?」

”物語に紡がれている世界は世界であれど介入できないので創造主である私にケツ拭きをさせる事にしたみたいだね”


「なぜそこで冒険者?」

”七海と私だけでダブネスを倒すのは簡単だよ・・・でもそれじゃ駄目なの困ったら勇者が現れて何でも解決してくれる世界じゃ”

「国々が協力してダブネスを倒す事で他人事でなく自分事で解決しないと私達が居なくなった後にダブネスに準ずる者が現れたら彩美が愛した物語世界が崩壊する」

”でも無名の私達では力がどんなにあっても人を動かすことはできない”

「だけど冒険者で高階級になれば色々な場所に影響を与えられる立場になる」

”いつダブネスが覚醒するか分からない今は最短時間でと考え立った結果だよ”


「わかりましたギルドは政治を含め各国とは完全に不干渉で中立を保っております」

”うん”

「なので出来る事は限られますが出来る事はお手伝いをさせて頂きます」

「ありがとうございます」

「勘違いしている冒険者も多いですが本来の冒険者ギルドの目的は強き者が弱き者を守り世界に安寧をですから」

”その信念がきちんと伝わってることがうれしいよ”


ギルマス室を後にしてジルと合流する

「依頼を探してたけど超高難易度ってことは監視者が付きそうなレベルを狙ってるってことだよね」

”さすがジル!”

「あっジルさん!今届きましたこの依頼はどうですか?」

受付に戻って来たミナイが依頼書をジルに見せる

除き見るけど読めないから意味がないね

ミナイが説明をしてくれようとしたけど制する

”遮音結界”

四人を囲むようにオレンジ色の結界が展開される

”ミナイさん続けて”

「はい!この依頼は闇の国王妃ルシファー様からです」

まったく仕込みに抜かりがないねルシファー

「循環調査隊が王都の南五十リーグに野営地を作っている盗賊の一団を発見したそうです」

五十リーグってことは約五十キロだね

「盗賊団の討伐だと!?」

「三百人位で野営地が完成したら王都周辺の村を順次襲う計画までは確認出来たそうです」

「三百人!?っておいミナイ!正気か!?」

「正規軍を動かしたいが訓練で逆の北方向に出ていて野営地も完成間近で移動している間に略奪がはじまる可能性が大きいので冒険者ギルドに依頼が入りました」

「それって金級でなく最低でも黒曜石級のパーティーが必要でしょ」

「ルシファー様の指定が金級となっておりますので理由は分かりませんが内容は討伐となり盗賊団の壊滅が依頼になります」

お膳立てがうれしよルシファー

”じゃあそれで!”

「彩美ぃ~本気かあ!」

「私達を信じて!」

「二人に昨日声を掛けたのが全てだったで覚悟を決めるよ」

「ではジルさん受諾のサインをお願いします」

ジルがサインをするのを見届け結界を解除する


旅の準備に食料と少しアイテムを買いに行くよ

ジルに案内されて食料品店に向かう途中

「無理には聞かないけどミナイの対応から今回の依頼は二人の為に依頼されたんじゃないかって」

”今回の依頼が終わったら全て話すけどルシファーが私達の為に出した依頼に間違いはないよ”

「王妃様を呼び捨てに出来るとかが全てなんだね」

”うん”


五十リーグを徒歩で往復となると四~五日分は食料を用意だね

馬なら一日の距離だけど馬は高価格ってのもあるけど厩舎とかの維持も大変で使ってる冒険者は貴族とか一部だけだよ

場所によっては乗り合い馬車とか使う位までかな

今回は近くに乗り合い馬車のルートがないので徒歩に決定

食品店ではガイアの一本バーみたいな形状をした携行食にバケットと調味料等に大量のワインと米酒を購入

「酒はわかるがなんで調味料?」

ってジルが不思議がってるよ

「彩美は料理も得意だから途中で食材が手に入ったらね」

「なんかピクニックに行く位の感覚なのかい」

と呆れてしまったけどね


雑貨屋では皮水筒とかフライパンとか鍋の調理道具にテントとかキャンプ用品も購入したよ

買ったものは昨日買った空間拡張術が施されたポーチへ

ポーチの口より大きい物が小さくなりながら吸い込まれるの不思議な光景だね

ジルは薬局でポーションを少し買い増しして買物終了

冒険者ギルド横のオープンカフェでビール飲みながらランチ

ランチは三人ともジルおススメのクリームパスタセットにしたよ

クリームパスタは流石に辛さ要素ないので安心だけどセットのスープとサラダのドレッシング辛さ超抑えめでお願いをしたよ

ランチセットが届くまではビールだね

「「かんぱーい」」

「って二人とも緊張感ゼロだなあ」


冒険者向けの店だけあってクリームパスタは超大盛

とても食べきれないので半分は七海に食べてもらったよ

「ジルおいしくて量も大満足だったよ!」

「ここはギルドが運営する店で冒険者か冒険者同伴でないと使えない店だけあってリーズナブルで量も多くて値段安めだけど味も良くて使い勝手いいんだよ」

注文取りにきた店員に食後のビールを追加して皮水筒を渡す

冒険者向けだけあって皮水筒に無料で水を入れてくれるんだって


ビールを飲み干す頃に水筒が届いたよ

うーんサイズを欲張り過ぎたかな水を入れて膨れた水筒は直径五十センチ位の球形に膨らんでずっしり重いよ

でもポーチに入れれば重さを感じなくなるので本当に空間関連の魔術は便利だよね

店のトイレを借りて出発準備完了!

”さあ行こう!”

ワクワクがたまらないよ!

「マジでえアノ依頼に向かうのにピクニック気分とか付いていけるのか私は」


南門は王宮の裏にあるのでメインストリート中央から王宮に向かう通りを進むよ

この通りは各国の大使館とか色々な政治とか経済に関係した施設が並んでいて人通りは少ないよ

王宮の前に着くと衛兵に

「金級のジルだ南門への通り抜けをお願いたい」

そうジルはシレってしてるけど金級って百人に一人が成れるかの階級で色々と優遇があるんだよね

盗賊団に対しては弱気だけど実際は崩れの盗賊位なら数十人程度余裕な実力なんだよ

「はっ!」

衛兵が道を開けてくれる

ここを通り抜けられないと王宮をぐるっと迂回するので結構な距離で時間を無駄に使うんだよね


王宮を通り抜け裏門から出ると知ってはいたけど実際に見ると凄い光景だよね

王宮の裏にはかなりの大河が流れてるんだけど何十何百って水車が設置されて回ってるんだよ

他の王都内を流れる川にもあるけど水車は濾過した川の水を水道水として王都内に送ったり温泉を汲み上げたりの原動力になってるんだ

水洗トイレが実現されているのも水車で送り出される水の圧力があって実現されてるんだ

メネシスでは最高レベルの土木技術だよ


川にかかる橋を渡ると南門だね北と西門は常時解放されてるけどここは王宮の裏近くなので許可がないと出入り出来ないんだ

あっ東門が無いのは東側は海だからね

門の衛兵にジルがメダルを見せると大門の横の通用口を開けて通してくれたよ

門を抜けると広がる緑の平原に街道が伸びてるよ

街道を歩き続けるよ

今日の目標は三十リーグ先の場所

そこからは街道を外れて盗賊の野営地方向に道なき道を進むよ


一時間で五リーグ進んで夕暮れの暗くなり始める十八時頃にはの予定ね

十五リーグを過ぎた辺りから光景は平原でなく両側が森になったよ

雑談をしながら歩いて来たけけど森の木々の間に気配が

気配を感じた瞬間に鉄乃剣を抜き七海と私を守るように前に立つジル

木々の間の薄闇に光る二つの眼

「この感覚はワーウルフか!?」

ワーウルフはガイアで言うとオオカミなんだけどお

姿を現した見た目はオオカミだけどサイズはミニバンサイズだよ

「二人とも私の後ろに」

ジルに焦りを感じるのは当たり前だよ時々でる討伐クエは白金級レベルな狂暴な奴だからね

”七海よろ”

「うん彩美だとワーウルフは無散しちゃって食材にならないもんね」

「はい!?」

何を呑気な会話をしてるって驚き振り向くジル


七海がワーウルフに右手を向ける

七海の腕の周りに光る細い矢が数十本現れたよ

少し間を置いて魔力が抜けるのを待って矢が十数本になるのを待ってるとワーウルフが飛び掛かってきた

「光矢」

解き放たれた矢がワーウルフに刺さる

矢はワーウルフの頭部に集中して脳を破壊したよ

ワーウルフの爪がジルの1メートル手前位で崩れ落ち地響きをたて地面に崩れ落ちる


「マジかよワーウルフを一撃とか初級魔法の矢でとか」

なんか呆然とするジルを気にしないで私はポーチから包丁を取り出しワーウルフの解体をはじめる

「おーヨツベで何回も見て勉強してきたのが役立ってるね」

”うん思ったより簡単だね”

もう呆れ果て呆然としてるジルだよ


今晩の夕食と朝御飯だけでいいので解体が簡単なロースとモモ肉を一抱えずつ切り出してポーチに収納

残りの部位は自然の摂理に任して消えるのを待ってもいいけど別の冒険者が見つけて不正討伐結果に使われてもなんで鬼火で消滅しとくね

「なんだか色々言いたいが私は必用なくないか」

”えっ必要とか不要なんて関係なく友達でしょ”

「ねえ一緒にいて楽しくて気持ちいいしね」

「おまえらあ!思考も規格外過ぎるうううう!でも友って言ってくれるなら私に出来る事を頑張るよ」


夕暮れ時には街道から外れる今晩の予定ポイントまで無事にたどり付いたよ

三人はギリ寝れるサイズのピルツタイプのテントを張ってテント前に焚火を起こして野営準備だね

”七海!ジルと食べれそうな野草を集めてくれるかな”

「ほーい!ジル行くよ」

”あっ香草もあると”

「元農家にまかせとけ!七海ぃ行くよ」


血抜きを十分に出来ず解体したからモモ肉を一口サイズにしたら何回か灰汁が出なくなるまで水に米酒を入れ煮溢して臭みを抜くよ

一切れ味見すると思ってたより柔らかくて野性味の癖は凄いけど噛み締めて行くと奥に隠れてた旨味が出て美味しいね

「ほい!」

って帰って来た二人が色々な野草を見せてくれたよ

”おお芋とか人参みたいなのもあるとか最高だね!”

「ジルが凄いよ!少し出た芽とかで色々見つけてくれたよ」

”これは楽しそう!酒飲んでて待ってて”

ワインのボトルを七海に渡してジルを任せて私は仕上げをするよ


芋は長芋に近いので一度油通しをして表面を固めるよ

我儘ならデミグラスが合いそうだけど無い物ねだりなんで香りの強い野草と一度煮溢して肉の野性味を殺してから芋とかの根菜系と一緒に少し少し煮込んで醤油と米酒に砂糖で味を整えワーウルフの肉じゃが風完成!

最後に煮溢した汁は少し臭みがあるけど肉の旨味がかなり出てるのでもう一回香りの強い野草を入れて少し煮込んで臭みを消してから葉物野草を入れて塩胡椒で味を整えてスープも完成だよ


ジルが恐る恐る肉じゃが風一口食べる

「あああ彩美い」

”なに?”

「臭くて食えないって有名なワーウルフの肉ををどうやってこんな美味に・・・」

”下処理を丁寧にしただけだよ”

「彩美の料理に関するこだわりは凄いからね」


野草探しの時に少し歩くと小川があるのを見付けてくれたので洗い物を持って小川に行き片付けしたよ

すっかり日も落ち真っ暗だけど焚火の灯りワインを飲むのもいいよね

私は少しだけ朝食準備でロース肉を薄切りにして多めの塩で揉んで一度洗い流してから鍋に大量に塩をいれて塩漬けにして下処理完了

「私は焚火の前で寝るから二人はテントでゆっくり寝てくれ」

”えっ一緒にテントで寝ようよ”

「火属性はね火の近くにいると安心するんだよ」

”そうか私が覚醒してから夜の闇が怖い物でなく安寧を感じるようになったのと同じか”

「何だかんだで属性は意識の奥底に色々影響するんだよね」


ジルは焚火の前に毛布を引いて横になってる

七海と私はテントの中で二人で一緒に毛布に包まる

ジルに感ずかれない様に軽い口付けを交わして抱き合う

七海の温もりに優しく抱かれて意識が闇に落ちて行く・・・

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