幕間 閻魔大王は独りごちる

「……ふむ。実に面白き童達じゃ」


 わらわは肘掛けに置いた指をトントンと軽やかに遊ばせながら、独りごちる。


 まさか、本当に死魂送りを成し遂げるとはのぅ。

 うむ。やはりあの者等に、わらわの血を呑ませて正解だったな。


 わらわは傍らに置いてある錫杖を手にし、カツンッと軽やかに鳴らして部下を呼びつけた。

 音に反応して、部下の一人が「閻魔大王様、お呼びでございましょうか」とすっ飛んでくる。


「他の十王達に連絡を取れ」


「ハッ、畏まりました。して、そのご用件は」


「神原結生並びに神原聖の阿鼻地獄行きの判決を変える。新たな判決は……」

 わらわが新しい判決を告げると、目の前の部下は大きく目を見開いた。ただでさえ、ぎょろりと飛び出ている目玉が更に飛び出す。


「よ、よろしいのですか?」


「何じゃ、わらわの判決に不服を持つか? それとも、わらわの判決が間違っていると申したいのか?」

「そんな、滅相もございません!」

 部下は瞬時にガタガタと震え縮み上がり、声高に且つ口早に答えた。


 わらわは「では、初めから無駄口を叩くな」と、冷徹に告げる。


「時間の無駄じゃ、早う行け」

「ハッ、ハヒッ!」

 素っ頓狂な声で答えるや否や、ドスドスッと太い足をバタつかせ出て行った。


 わらわはそんな部下の背を見送ってから、机に広げてある童等の調書に目を落とす。


「フフフ。実に面白き因果じゃのぅ……篁よ」

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