第24話 vsオークキング
「飛刃ッ!」
体勢を整えながら手を手刀の形にし、斬撃を飛ばす。しかしオークキングは避ける事もせず、強靭な肉体で弾く。
“はあっ!?”
“嘘やろ!?”
“避ける必要すら無いのか…”
降ってくる巨大な棍棒を紙一重でかわし、蹴り飛ばす。多少よろけるも、それすら利用した回し蹴りが俺を薙ぐ。
「ぐぅっ……!!」
今度はしっかりガード。だが、それでも威力は凄まじい。後ろに飛んで衝撃を逃すも、ガードした腕が粉々になってしまいそうだ。
「飛刃!」
追撃しようとしてきた奴の目に向けて飛刃を放つ。目は流石に危ないと思ったか、首を傾けて回避する。その隙に、死角に回り込み息を整える。
“え、スイッチ……?”
“嘘だよな…?”
“え、スイッチの攻撃きいてなくね?”
“こんな強いなんて聞いてない”
“何だこの絶望感…”
魔眼で攻撃の起こりは見えている。けど、速過ぎる……!全ての動きに無駄が無いから、身体能力も相まって殆ど瞬間移動に近い。眼で追うのが精一杯だ。
「チッ……!!」
咄嗟にしゃがむと、棍棒が俺の上を掠めていった。
この攻撃も厄介だ。死角にいる筈なのに、いやに正確に俺の位置を狙ってくる。棍棒も大きい上、色んな武器がくっ付いてるから不規則な横幅にも対応しないといけない。何より、全ての攻撃がほぼ音速の必殺技。避ける事に全神経を注いでも、次から次へと攻撃が途切れることなく続く。
反撃する暇も与えてくれないか、クソ!
「はははははははっっ!!」
それで良い。
“笑ってやがる……”
“コイツもバケモンじゃねえか”
“この状況で笑えるのはイカれてるわ”
“これがスイッチの本来の目的か…”
“分かってはいたけど、やっぱ辛えわ”
“死なないでくれスイッチ”
スペック全てあちらが上。武器の有利もある。ならば打つ手はないのか?
否。無ければ作れば良い。
「纏魔気鱗」
“キタ!”
“これで勝つる!”
“何だ?”
“エクストラスキル?!”
“纏魔気鱗で更にブーストや!”
一瞬だけコメントが見えたけど、盛り上がっているな。申し訳ないんだけど、さっき使ってて普通に負けたんだよね。
やっぱり、スキルは声に出した方が使いやすいな。さっきよりも少しだけ早くオーラが巡る。だが、今はその少しの時間がありがたい。
大きく距離を取り、オークキング全体を視野に入れる。一歩の踏み込みで俺の前まで来ようとすり奴に反応し、俺も全速で迫る。
棍棒での攻撃を瞬時に止め、脚で俺を迎え打とうとしてきた瞬間を、俺は見逃さなかった。
「そこぉっ!!」
蹴りをかわし、奴の蹴りを加速させる様に思い切り蹴飛ばす。今まで以上にグラついたオークキングは、真下にいる俺目掛けてのしかかろうと倒れ掛かってくる。
「はっ!!」
股下からのしかかりを潜り抜け、バッグからイジェクションボアの牙取り出す。跳躍しながら、全てのオーラを両手に込める。オークジェネラルがした様に、牙に俺のオーラが巡っていく。
「飛刃!!」
オークキングの頭部を視界に捉え、飛刃を放つ。狙ってくると分かっていたのか、それを片手で受け止められる。
纏魔気鱗のオーラを手に集中させたお陰か、僅かに手に傷が走る。でも、本命はそっちじゃない。
「オラアッ!!」
自分の手でオークキングが俺を見失っている隙を突き、奴が持っていた棍棒をイジェクションボアの牙が切り裂いた。
“オオオオオオオオオオオ!!!”
“よし!よっし!”
“棍棒破壊した!!”
“速すぎて何も見えんが、棍棒壊れた!?”
“いけるぞ!”
“勝てるぞスイッチ!!”
“通じてる通じてる!”
「まだまだぁ!!」
5個ある内のコアの一つは、棍棒を握っていた右腕の肘付近!
棍棒を切り裂いた勢いをそのままに、奴の前腕をバックリと切り開いた。
「は?」
まるで時間が巻き戻っていく様に、俺の目の前で切り裂かれた前腕が元に戻った。
“は?”
“は?”
“え?”
“嘘…”
“ふざけんな”
“何だそれ”
思わず呆けてしまった俺を嘲笑う様に、目の前の手が俺を張り手で吹き飛ばす。
イジェクションボアの牙が粉々に砕け、俺と一緒に地面に散らばる。
「ハッ…ハッ…!超再生もあるのかよ……はは…!」
格が違い過ぎる。
武の達人の様な身のこなし、普通の攻撃をガードする必要すらない規格外な肉体、異常な反射速度と視野の広さ、そして今の超再生。
これは、腕の立つダンジョンアタッカーが負けるのも無理はない。
「クッソが……!」
殺気を感じ、悲鳴を上げる全身に力を込める。飛び起きて、迫っていた拳をかわす。続いて飛んでくる蹴りも避け、ひたすら攻撃をかわす事に集中する。
“ひいいいいいいいいいい!!”
“逃げろスイッチ!”
“もう良い。もう逃げてもええんやで”
“頼むから逃げてくれぇええええええええ”
“逃げるってどこにだよ”
“逃げれるなら他のダンジョンアタッカーも逃げれてただろがい!”
“救いはないのですか…?”
「………」
でもまあ……もう、良いかな。
十分に目的は果たしたんじゃないか?オークキングのスペックや行動も見えてきたし。色々解説してくれた先輩もいてくれたし。少なくとも、ムーブという配信サイトにこの情報が乗ったんだから、コイツの事もすぐに広まるだろ。
つまり、俺の役目はもう終わりなんじゃないか?
「………ッ!」
無駄な事を考えていたせいで、飛んでくる蹴りに反応が遅れた。咄嗟にガードするも、足が地面から離れる。
「あ」
オークキングの拳がーー。
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