第35話 決着のあとは両手に花

「終わったな……」


「リオンくーん!」


「……!?」


 そういえば、頭に血が昇っていて気にしていなかったが……フーラの奴、裸だ。


 彼女は素っ裸で俺に抱きついてくる。


「リオンくん、リオンく……ん!」


「ふ、フーラ、あ、あの……」


 あ、やばい、良い匂いしゅるううう!


 裸のフーラからダイレクトに女の子の匂いしゅるううう!!


 こんなん無理。耐えられない。


「助けてくれてありがとう。リオンくん」


 裸の上目遣いとか効果抜群なんですけど。


「魔人化する時ね、まるでブラックホールに吸い込まれるみたいに怖くて、寂しくって。その時、リオンくんの顔が浮かんだんだ。リオンくんが助けてくれるかもって思った」


「お、おい、フーラ……」


「気が付いた時、太陽みたいに暖かくて、優しい光に包まれてね。そこでわかったんだ。あ、リオンくんが助けてくれたって。すぐにわかったよ」


「フーラ。お前の感謝の気持ちはわかる。だけど、流石に思春期男子に同級生の裸は刺激が強過ぎる」


「はい?」


 フーラはようやくと自分の体がどうなっているのか理解したみたいだ。


「はわわわわ……!」


 みるみる内に顔を赤く染めた。


 これは殴られるやつ。


 覚悟を決めた瞬間、フーラがギュッと俺を強く抱きしめる。


「リオンくん、に、なら、見られても、良い、よ?」


「!?」


 恥じらいながらのセリフは刺激が強過ぎるんですけども。


「だって、私の勇者様だもん。私の全部を見て、欲しい、かな」


 こんなもん理性を保てという方が無理じゃないだろうか。


 そう思っている矢先に、現場は急激に寒くなる。


「ごーしゅーじーんーさーまー」


「はっ!?」


 隣では殺気を立ててこちらを睨み付けるヴィエルジュの姿があった。


 あかん。殺される。


 諦めかけたその時、予想外にもヴィエルジュは微笑んだ。


「私を、お姉ちゃんを救ってくれてありがとうございます。ご主人様は私の……私達の勇者様ですよ」


「ヴィエルジュ……」


「ですが、お姉ちゃんだけ裸でご主人様と抱きつくなんてずるいです」


 するする──。


「ちょ! ヴィエルジュさん!? なんで脱いでんだ!?」


 メイド服を脱ぎ捨ててこちらに完璧な男の理想の体を見してくれる。


「お姉ちゃんよりも圧倒的ボディを堪能してくださいませ」


 ギュッとヴィエルジュも裸で抱きついてくる。


 ロイヤル双子姉妹が裸で抱きついて来るとか、ここは天国か。


 いや──。


「ちょー! 手を出しちゃう! 手を出しちゃうから!! 今すぐに服を着てくれー!」


 ロイヤル双子姉妹へ懇願するが、ふたりは見合ったまま悪戯をする妖精みたいに微笑んだ。


「「私と結婚してくれるまで手を出しちゃだぁめ♡♡」」


「生殺しだああああああ!」

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