第31話 やばい性癖のイケメンに天罰を
「先生!?」
ゴボゴボと血を流しながら膝を付くカンセル先生は、吐血しながらも俺達に大丈夫と言わんばかりに手をあげる。
「流石は二番隊隊長。常人なら即死なのだがな」
暗い茂みから現れたのはアルバート魔法団一番隊隊長のジュノー・ハーディングだった。
こいつ……なんて卑怯な……。
いや、今はそんなことよりも先生の傷の方が心配だ。
「ヴィエルジュ」
「かしこまりました」
ヴィエルジュはカンセル先生を抱きかかえてくれる。
名前を呼んだだけで何をして欲しいかわかっているのは俺とヴィエルジュの築いて来た絆によるものだ。
魔法使いは回復魔法が使えないらしい。少なくともヴィエルジュは回復魔法を使えない。
だからすぐに治療できる場所まで運ばないといけない。
今、カンセル先生を安全な場所に連れて行けるのはヴィエルジュだけだ。
「ご主人様」
俺を呼ぶと、持っていた魔法のムチを投げ渡してくれる。
「私の愛のムチをお使いくださいませ」
「お前の愛のムチを受け取ったぞ」
「また後で使いますので、大切に使ってくださいね」
こんな状況だからこそ、ヴィエルジュといつもの会話をしながら、彼女は風魔法でカンセル先生を抱きかかえて街の方まで飛んで行った。
「こんなに簡単に行かせて良いんですか?」
さっきから黙って見ていたジュノーへ尋ねると、余裕のある笑みを見してくる。
「ああ、別に良いさ。きみを僕の手で処刑できればなんでもね」
「こりゃまた物騒なことを仰る人ですね。俺、先生に恨みを買うようなことしましたっけ?」
「きみは……お前は僕のおもちゃに手を出して先に遊んだ」
「はい?」
おもちゃってなんだ?
「フーラは僕のコレクションに入れる予定だった。王族なだけあり、遊ぶのに随分と時間がかかったが、待てば待つほどにおもちゃで遊ぶ時の快感は凄まじい」
ギロリと犯罪者みたいな睨みつけを披露される。
「お前みたいな奴がフーラの処女を奪った!!」
「え? いや……」
何言ってんの、こいつ。
「僕がフーラを破瓜させる予定だった!」
「なんちゅうこと言ってんだよ」
「僕は処女にしか興奮しない!」
「やべー性癖だな、おい」
「僕の性癖を踏みにじった罪は死罪だ!!」
「おっけー。わかった、白状しよう。俺達は付き合ってない」
「黙れ!! フーラのあの顔は処女を散らした恋する女の顔だ!」
「お前まじで顔面だけだな。イケメンならなに言っても言い訳じゃないぞ。気持ち悪い」
フーラが生理的に無理って言ってたのがわかる。男でも無理だわ、こんな奴。
「つまりジュノー先生は、フーラと付き合った俺が憎いために元魔法団と手を組んでフーラを誘拐し、俺に罪を擦り付けた。これを元魔法団の手柄としようとした。これで邪魔な俺は消せるし、元魔法団は元鞘に戻って一石二鳥ってことで良いんですよね?」
それにしても、フーラを誘拐するなんて大掛かりなことしなくても良いと思うがね。
「は? 全然違うのだが」
「え? 違うの?」
ちょっと、カンセル先生? あんたの推理外れているんですけど。
「元魔法団の連中などどうでも良い。所詮は僕の駒さ」
カンセル先生? こいつ、本当に慕われてるの? カス中のカスみたいな発言したよ。
「僕の快楽を奪ったきみを処刑したい。勝手に処女を散らしたフーラには罰を与えたい。それだけだ」
理由があまりにもクソな件。
「処女じゃないおもちゃなどいらない。そんな奴はさっさと魔人化させてしまうのが良いのさ」
「魔人化?」
ゲスなワードの中に気になる単語が出て来やがった。
「ああ、そうだ。魔人化だ。冥土の土産に教えてやる」
本当にそんな負けフラグを立てる奴っているんだな。
「僕達は魔人化に付いて研究している。研究の結果、アルバート王家の血を利用すれば強靭な魔人の力を操れることがわかった。そうすれば世界を我が物にするのも容易い。だから僕はアルバート王家に近づいたのさ。最強の力を手に入れるためにね」
魔人化、研究結果、アルバート王家の血……。
「お前はルージュを魔人化させた奴の仲間というわけか」
「ルージュ……? ああ、アルバートの第二王女か。確か、エウロパが昔に実験で魔人化させたと言っていたな」
エウロパが第二王女を魔人化させた。
この言葉から、ルージュを化け物にした犯人。ルージュとフーラの魔法の先生の名がエウロパということになる。
「ふっ。皮肉なものだ。同じ人物に姉妹が魔人化させられるとはね」
「そいつは死んだんじゃないのか」
「奴は回復薬の研究もしていたのが幸いしたのさ。治療には時間を有したみたいだがね」
ルージュを化け物にした魔法の先生が生きていたとはな……。
「血の研究はまだ完璧ではないが、処女でもないおもちゃも用済み。そん奴は魔人化でもして、せめて僕の役に立てば良い。今、街で暴れているのも魔人化したフーラだ」
あっはっはっはと嘲笑うこいつの笑い方は嫌悪感しか抱かない。
「もう良い。色々わかったから口を開くなゲス野郎」
パチンとムチを地面に打つと、高笑いをしていたジュノーが杖を構える。
「ほう。向かってくるか。きみの実力は認めよう。実際に天才魔法使いと名高いフーラを倒したからね。だが、ムチを持った騎士など敵ではない。世界の頂点に立つこのジュノー様の魔法をとくとご覧──」
相手が杖を構える前に、相手の杖をムチで奪ってやる。
「なっ……!?」
「上手くいったな」
この魔法のムチ。魔力を送ると思うままに操ることができるな。魔法使いが使うと魔法が放たれるし、凄いムチなのでは?
「ふんっ!」
バギッ!
ジュノーがいくら強い相手だとしてと、所詮は魔法使い。魔法を使わせなければ良い。単純なことだ。
ジュノーの杖を握りつぶしてやると、パチンとムチを引っ張ってやる。
「杖を持っていない魔法使いなど恐るるに足らず。お仕置きの時間だ。この変態野郎」
「や、やめろ。ぼ、僕にそんな悪趣味はない」
「処女中毒の方がよっぽど悪趣味じゃボケええええええ」
パンッ!
「ぎゃああああああ!!」
「これは俺の分! これはルージュの分!! これはフーラの分!!! これはカンセル先生の分じゃ!!!!」
パン! パンッ!! パンッッ!!! パンッッッッ!!!
ムチで打ちまくる。
「どうだ! SMの世界は!?」
「ぐああ! やだああ! SMやだあ! 処女が良いいいいいいい!!」
「まだ言うか、この腐れ外道が!! ぶっ殺す!!」
ここから俺のムチ乱舞が始まったのであった。
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