有名侯爵騎士一族に転生したので実力を隠して一生親のスネかじって生きていこうとしたら魔法学園へ追放されちゃった。こうなったら学園生活を謳歌してやるって思っていたのにどうやらそうはいかないらしい
第61話 二章エピローグ〜やっぱり魔法学園は学園生活を謳歌させてくんない〜
第61話 二章エピローグ〜やっぱり魔法学園は学園生活を謳歌させてくんない〜
「なぁんか久しぶりな気がするなぁ」
アルバート魔法学園の席に座り、机にベターっと突っ伏してそんな言葉を放つ。
「ご主人様は今回も色々とございましたものね。お疲れ様です」
右隣に座るヴィエルジュが労いの言葉を放ってくれる。
「俺ってば、この学園に来てからまともに学園生活を送っていないかもしれないな」
「そんなことは……」
ヴィエルジュが否定しようとしたところで、言葉を止める。
「あるかもしれませんね」
「だろー。はぁ……。いつになったら学園生活を謳歌できるのやら」
ため息をこぼしてしまうと、「朝から辛気臭いよ」なんて明るい陽気な声が聞こえてくる。
「おはー。フーラ」
「おはようございます。フーラ様」
「おはよう。リオンくん。ヴィエルジュ」
朝の挨拶をしながら俺の左隣に座る彼女へ一つ質問を投げる。
「ウルティムの様子はどう?」
過去を取り戻した彼女だが、帰る場所がない彼女は今でもアルバート城で居候させてもらっている。
「うん。まだ気持ちの整理が付いていないって感じかな。今日も学園は休むかもだから先に行ってって言われたし」
「そりゃ、あの後じゃ色々と思うところもあるもんな」
ウルティムは無事に過去を取り戻した。だからこそ情報過多になっちまって気持ちが追い付いていないのだろう。今はゆっくりと自分を見つめ直す時間が必要だと思う。
「マスター。みんな、おはよう」
とかなんとか思っているとウルティムが現れる。
「ウルティム。体調は大丈夫なの?」
フーラが心配そうに問うと、コクリと頷く。
「心配かけてごめん。大丈夫」
そう言いながらフーラの席の前に立つ。
「ん? どうしたの?」
「そこ、わたしの席」
「いやいやいや。自由席だから」
「わたしはステラシオン第三王女」
「だったら私はアルバートの第一王女ですけど!?」
「権力はフーラの方が上」
「無表情だけど、それはウルティムが折れたってことで良いの?」
「でもフーラ。わたしの方が年上」
「超絶お姉様になるんだろけど、わたしの家に居候してるよね?」
「まごうことなき真実。権力はフーラの方が上」
「さっきから喧嘩を仕掛けてくる割に折れるの早くない?」
「フーラ様。アルバート魔法王国の第一王女なのですから、席を譲るくらいしたらいかがです?」
やれやれとため息を吐きながらヴィエルジュが言う。
「だったらヴィエルジュが変われば良いでしょ?」
「ご主人様の右隣は私と決まっております。ね? ご主人様」
「確かに。右隣にヴィエルジュがいないと違和感があるな」
ドヤァとヴィエルジュがフーラにしてみせると、ぐぬぬと悔しそうな顔をする。
「フーラ。マスターに少し話がある。少しだけ良い?」
ウルティムの言葉にフーラが完全に折れる。
「わかった。変わるよ」
「ほらほら。早く変わってください。
「おい。今、私のことを爆弾処理班って書いてフーラと呼ばなかったか?」
「言いましたが、なにか?」
「よぉし。その件について徹底的に語り合おうか、ヴィエルジュちゃん」
向こうで双子が語り合いだした。
「ウルティム……で良いのかな。それともアリエスと呼ぶべきか?」
フーラと入れ替わりで左隣に座る彼女へ問うと軽く首を横に振る。
「どちらでも構わない。ウルティムというのはマリンが名付けた魔法の名前」
「そうだったんだ」
「適当にカッコいい名前を付けてあげるって言われた」
適当だったんかよ。
「でも、それで良い。ちょっとでもそれで呪いという概念が緩和されるようにって意図だから」
「確かに。呪いって感じじゃないもんな」
「世界最悪の魔法ってのもわたしが封印されている間に名付けられたもの。それに、マリンが付けてくれた名前だから気に入っている」
「そっか。なら、今まで通りにウルティムと呼ぶことにするよ。
彼女がコクリと頷いてくれる。
「それで、話ってのは?」
改めて話題を振る。
「そんなに深刻な話ではないけど」
そう前置きをしてからウルティムが語り出す。
「わたしの呪いはマスターによって解かれた。今ではマスターの意思によって自在に扱えるようになっている」
動画内でのマリンもそんなことを言っていたっけな。
「呪いは解けたかもしれないが、やっぱりわたしはマスターの側にいた方が良い」
だから──。
無表情をくしゅりとさせて、笑顔を見してくれる。
「これからもよろしくね。マスター」
ああ。マリンが言っていた笑顔ってのはこのことか。確かに破壊力抜群だな。
「ああ。よろしく。ウルティム」
ギュッっとウルティムが俺に引っ付く。
「わたし達の絆をこれからも深めていこうね」
「「ああああああ!」」
ウルティムが抱き着いた瞬間、ロイヤル双子が声を荒げる。
「ちょっとウルティム様! なにをしているのですか!」
「マスターとの絆を確かめている」
「むぅ! だったら私も!」
そう言って、右腕からいつも通りの感触が伝わってくる。
「おーい! 私はリオンくんに抱き着けないぞー!」
ヴィエルジュの右隣にいたフーラが声を出すと、ヴィエルジュとウルティムがほくそ笑む。
「おつ、です」
「おつ」
「こぉんの! あばずれどもー! そこをどけええええええ!」
「「いや」」
「くっそおおおおおお!」
奥でフーラが声を荒げているところに、呆れた顔したカンセル先生が俺の前に立つ。
「おい、リオン。学園青春ラブコメを繰り広げて羨ましいな」
「ようやく、色々と落ち着いたのでこれからゆっくりとラブコメルート突入です」
「お前も色々と大変だったもんな」
けど。
カンセル先生は苦笑いでこちらに残酷な通知をしてくる。
「今日から毎日補習が始まるから束の間のラブコメを楽しんでおけ」
「……ぬ?」
学生ならば誰しもが聞きたくもない言葉が放たれて場が凍る。
「いや、学園サボって色々やってたのはわかるが、授業に出てないことには変わりない。普通なら授業日数が足りずに退学のところを、なんとか補習まで持っていってやったんだから感謝しろよ」
それはカンセル先生に感謝なんだけどさ。
「今日からみっちり魔法学についての勉強を放課後6時間分だ」
「ノオオオオオオ!」
俺の平穏な学園生活ってのは、まだまだ遠いみたい。
いや、ほんと、遠い……。
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