有名侯爵騎士一族に転生したので実力を隠して一生親のスネかじって生きていこうとしたら魔法学園へ追放されちゃった。こうなったら学園生活を謳歌してやるって思っていたのにどうやらそうはいかないらしい
第56話 脳筋王女の沼らせビームなんて効かない
第56話 脳筋王女の沼らせビームなんて効かない
ステラシオン騎士王国にあるエスコルさんの鍛冶屋。そこでルべリア王女とたまたま出会ったので一緒に店に入ることとなった。
ウルティムを封印していた剣をエスコルさんに鑑定してもらうために手渡した。
待っている間は手持無沙汰。
どうやらルべリア王女も暇なのか、店にある剣やら槍やらをボーっと眺めているので話しかけることにする。
「元気そうでなによりです」
彼女は魔人の呪いを受け、魔人化してしまった。
その呪いを俺が解いた。
その後すぐにウルティムの大爆発を抑えるために無茶をさせてしまったため、城で安静にしなければならなくなった。
ステラシオンから感謝状とか金一封を頂く時に、王様と王妃様、それとクレス王子の姿はあったが、ルべリア王女の姿はなかったため、少し心配していたんだ。
「ああ。おかげ様でな」
チラリとこちらを見ると、少々頬を赤くしてすぐに視線を逸らす。
「風邪でも引いてます?」
「至って健康だ」
「でも、ちょっと顔が赤いですよ」
「そ、それは……!」
ルべリア王女を両頬を手に置いた。
口調は強めだけど、その見た目と行動は乙女チックだね。ギャップってやつを感じるね。
「ええい! この店が熱すぎるんだ!」
彼女の言い訳に奥からエスコルさん声が聞こえてくる。
『仕方ねーだろ! ここは鍛冶屋だ! 文句あんならおめぇの剣はもう打たねーぞ!』
「すみませんでした!!」
秒で謝る王女。
王族に物申す鍛冶屋。流石はエスコルさんだわ。
「お前のせいで怒られたではないか」
「今のを俺のせいにするのは理不尽過ぎるのでは?」
「これは責任を取ってもらわないとな」
「王族がいきなり権力をかざそうとしてくるんですけど」
「そうだな、これは、あれだ。あれをしてもらわないとな。け、けけけ……」
言いよどんでいる内に顔はイチゴのように赤くなっている。大丈夫かよ。
「け、けっこん、だな……」
「結婚?」
いきなりなにを申し込んで来るのやらと思っていると、バフっと頭から煙を出しながら慌てて訂正してくる。
「け、けっとうだ! そう! けっとう!」
「職権乱用がガチムチ過ぎるだろ」
「う、うるさい! あたしとけっとうしろぉ」
「本当に嫌です」
もう決闘はこりごりなんだよ。なんで学園外でもそんなことしなきゃならんのだ。勘弁して欲しい。
「そ、そう言わず、相手をしてくれよぉ、リオン・ヘイブン」
なんか変態親父みたいな言い方をしてくる王女様だな。
「騎士団の人を相手にすれば良いじゃないですか」
そう言うと、彼女は少しばかり困った顔をしてみせる。
「実はな、自分で言うのもなんだが、あたしの魔力が以前より爆発的に上がっているんだ。もう騎士団の連中じゃ話にならない」
ヴィエルジュやフーラと同じだ。やはり、俺の魔力を送り魔人の呪いを克服すると強くなるんだね。
「なぁ、リオン・ヘイブン」
ルべリア王女が上目遣いで見てくる。
「相手、して」
「ルべリア王女。『悶絶確定。彼ピを沼らせる激モテ指南書、虎の巻』読んだでしょ?」
「な、なぜそれを──はっ!?」
うわー。あれって全国発売してるんだ。つうか、ルべリア王女も読んでんだ。
「すみません。ルべリア王女如きの沼らせビームは俺には効きません」
ウチの専属メイドのノーマルの上目遣いで免疫ができてるからね。
「うう……。ばか、ばか!」
ぺしぺしと俺を叩いてくる。
「いたっ! ちょっ! いたっ!」
ヴィエルジュやフーラのぺしぺしは冗談混じりのじゃれ合いなんだけど、この人のはまじで痛い。流石ガチムチ。本当に痛い。
「お前ら。人の店であんまりイチャコラしてんなよ」
奥から俺の剣を持ってやって来るエスコルさんは呆れた顔をしていた。
「これがイチャコラに見えます?」
一方的な暴力でしたけども。
「ああ。お似合いのカップルだ」
「似合いの夫婦だなんて……」
ルべリア王女はうっとりとしていた。
なんか、色々ツッコミは面倒だし放置でいいや。
「エスコルさん。どうでした?」
本題に入ると、彼は申し訳なさそうに首を横に振る。
「すまねぇ。随分と古い剣ってことしかわからなかった」
「そうですか」
エスコルさんでもわからなかったか。しょうがない、他を当たるとするか。
「それは旧ステラシオン王国のものではないか?」
「え?」
ふと、うっとりをやめてルべリア王女が言ってくる。
「ルべリア王女、この剣のことを知っているんですか?」
「剣のことはわからないが、その柄のマークは間違いない。旧ステラシオン王国のものだ」
すげー大ヒントをくれるルべリア王女がガチムチから聖女のように見える。
「その剣のことを調べているのか?」
「はい。でも、なにも手がかりがなくて。今、ルべリア王女からようやくとヒントを得れたところですよ」
「ふむ」
ルべリア王女は少しだけ考えたあとに提案してくれる。
「旧ステラシオン王国についてはステラシオン大聖堂にいる司教様が詳しいはずだ。一緒に行こうか?」
「良いのですか?」
「当然だ。あたしはお前に助けられた身。これくらいは当然だ」
「職権乱用してたのに?」
「あ、しまったな……。交換条件でけっこんを持ち出せば良かった……」
「けっこん?」
「はわっ! ち、違うから! リオン・ヘイヴンとけっこんしたいとか思ってないから!」
あわあわとしているルべリア王女を見て、エスコルさんがやつれた顔して言って来る。
「お前ら。おっさんとじじぃの狭間にいる俺の前でそんなやり取りするなよ。心が浄化しちまうだろうが……」
「ほ、ほら。エスコル殿の迷惑にもなる。さっさと行くぞリオン・ヘイヴン」
そう言ってルベリア王女はそそくさと店を出て行った。
後に続こうとするとエスコルさんが俺を呼び止める。
「その剣。魔法で仕掛けみたいなものが施されてるぞ」
「仕掛け?」
「ああ。俺は魔法は詳しくないからわからんが、そこまで強い魔法じゃないな」
魔法の仕掛けってのは、俺の魔力に反応してウルティムが発動するってやつのことを言っているのだろうか。
でも、そうなると強い魔法じゃないってのは矛盾が生じる。あの大爆発が弱い魔法なわけないしな。
「ま、大したことじゃないだろうが、一応伝えておこうと思ってな。すまんな、解析できなくて」
「いえ、ありがとうございました」
エスコルさんに一礼してから、ルべリア王女を追いかけることにする。
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