有名侯爵騎士一族に転生したので実力を隠して一生親のスネかじって生きていこうとしたら魔法学園へ追放されちゃった。こうなったら学園生活を謳歌してやるって思っていたのにどうやらそうはいかないらしい
第54話 ある組織が狙ってきているけど、そんな場合じゃない
第54話 ある組織が狙ってきているけど、そんな場合じゃない
「むっふーん♡」
「もうやだ……お婿にいけない……」
さっきヴィエルジュに黒歴史確定のセリフを言いまくって、もう恥ずかしくって辛い。穴があったら入りたいとはこのことだ。
「大丈夫です。私が責任を持ってもらってあげますよ」
なんか前髪をかきわけて爽やかに言われてしまう。
「あらやだ。イケメン彼女」
「ドヤァ」
自分でドヤァって言っちゃった。
とか言っている場合ではない。
黒歴史と引き換えに、ヴィエルジュからネックレスを受け取ったのだ。
「それはそうと、ご主人様。そのネックレスをどうするおつもりで?」
「こうすんだよ」
俺は凍っている髭もじゃへネックレスをプレゼントしてやる。
「ヴィエルジュ。氷の魔法を解いてくれ」
「かしこまりました」
ヴィエルジュが氷の魔法を解くと、ジュゥと湯気が立ち、髭もじゃが解凍された。
「……はっ」
「おらぁ、誰の差し金じゃい! さっさと吐かんかい!」
ヴィエルジュへの黒歴史も相まって、口調が荒くなるよね。
「ひぃぃ。お、お助け……」
「おらおら! 助けて欲しけりゃ洗いざらい吐かんかい!」
「は、話す、話しますからー!」
「これ、ネックレスは関係ないのでは?」
♢
「お、俺は珍しい、『魅了』の魔法が使えるんだ」
こぉんな見た目なのに魅了って……。
でも、その魔法のせいで俺はこんな奴がダンディに思ったり、あのガラクタのネックレスが宝石に見えたりしたってことね。納得かも。
「この魔法を見越して、俺はある組織からあんたを連れて来るように頼まれたんだ。ガキひとり連れて来るなんて大したことないって思ってたらこのザマよ……。へへ……」
「ある組織ってのは?」
「おっと。そいつは言えねぇ。言った瞬間に、俺はドカンだ」
なるほど。制限の魔法でもかけられていると。
ふむ……。こいつの発言から俺はある組織から狙われているっことになる。
──絶対ウルティム関係やん。
うわー。ややこしいこと、この上ないなぁ。
こっちがとんでもなく面倒臭いことに巻き込まれてんなぁと思っていると、ヴィエルジュが髭もじゃの髭を鷲掴みする。
「な、なにすんだよ、姉ちゃん」
「ある組織なんてどうでも良いです。あなたのその魔法。私にください」
「へ? ね、姉ちゃん。魔法をあげるってのは……」
ピキっと髭もじゃの髭が凍る。
「冷たっ! いや、いたっ! 痛い! 痛いんですけど!」
「つべこべ言わずに魔法を渡してください」
ヴィエルジュの目が怖かった。
「ひ、ひぃぃ! ひぃぃぃぃぃ!」
髭もじゃがこちらに助けを求めるが、こうなったヴィエルジュは止まらない。俺は諦めろと言わんばかりに首を横に振った。
「魅了の魔法を早く。私に。さぁ!」
「み、みみ、魅了の魔法は才能だ! 教えるとか、そんなの誰もやったことがない!」
「やったことがないのなら、あなたが今日初めて教える人となるのです。歴史を刻むのですよ。さぁ」
「わ、わわわ、わかった! わかった! 教えるから! メインベルトって組織だ! メインベルトって組織が俺に頼んで来た」
なんか勝手に吐いたよ、この髭もじゃ。ドカンじゃないの?
「そんなことはどうでも良いと申しましたよね。わかりました。だったら、そのネックレスです。そのネックレスの使い方を教えてください」
「このネックレスは俺の魔法を込めているだけだ。だからネックレスに使い方なんてない」
「ふぅん」
ヴィエルジュは更に相手の髭を凍らした。
「痛い! あ、やばっ! 痛すぎる! 本当だ! これ以上は知らない! ベスタって奴に頼まれたくらいしか知らない!」
洗いざらい勝手に話してんなぁ。つか、ドカンは?
「魅了の魔法は?」
「だから無理だってー!!」
「ふん!」
ヴィエルジュは無残にも髭を粉々にした。
「んぁぁぁああああ! 俺のアイデンティティがああああああ!」
「それで就活でもしてまともに生きなさい」
なんか知らんがカッコよく決めていた。
結局、ドカンもウソなのね。ちょっと期待しただけに残念。
「行きますよ。ご主人様」
「は、はい」
なんか立場が逆転しているんですけど。
でも、メイドに引っ張られるのってなんか、いいね。
「そういえばご主人様。ウルティム様を封印されていた剣で戦ったのですね」
「そうだな。これを眺めている時にヴィエルジュが来たから」
「大変失礼致しました。その時の記憶は曖昧で……」
「仕方ないさ。世の中には強いだけではどうしようもない魔法が存在することがわかって良い収穫だったよ」
世の中、見た目では判断できないような奴が凄い魔法を使って来る。うん。良い勉強になったな。
「ところで、その剣を使って大丈夫でしたか?」
「ん?」
「だってその剣、ご主人様の魔力に反応するんでしょ?」
「あ……」
ちょっと待って、さっきの大爆発って、まさか──。
♢(以下、フーラ視点になります)
私、フーラ・アルバートはアルバート魔法王国の第一王女。そうお姫様。お姫様なんだよ。それなのに……。
「いつの間にこんな立ち位置に……」
「フーラ。手が止まっている」
「はいはい」
私は今、ウルティムに提供した部屋で、お風呂上りの彼女の髪をといてあげている。
自分で言うのもなんだけど、私、王女なんですけど。お姫様なんですけど。
とか言いながらも、こういう扱いが美味しいと思っている自分もいる。
これもリオンくんと出会ってからかな。あの人、私のことを一切お姫様扱いしてくれないもん。失礼だよね。でも、それが嬉しいというか、なんというか。
「──って、ウルティム? なんか光ってない?」
「マスターが私を使用した」
「ん?」
「『ウルティム』が発動する」
「……はい?」
「私、大爆発。お茶の間ドッカーン。木っ端微塵」
「ちょー!」
え、ちょっと、まっ! え!?
「な、ななな、なんで!?」
「マスターが私を欲した」
「リオンくんがウルティムを発動させたってこと!?」
「そゆこと」
「あんのやろー!」
とか言っている場合じゃない! 世界最悪の魔法が発動しようとしている!
「なんとか魔法の威力は抑える。世界爆破から、この城の壊滅レベルまで下げておく」
「世界滅亡から一国を亡ぼすレベルに下げれるんだね。そういうコントロールできるだ。でも、うん、アウトだね。それでも普通にアウトだね」
「これ以上は下げれない。前みたいに、ヴィエルジュの魔法の中に閉じ込めてくれればなんとかなるかも」
誰もいないよ! 絶体絶命じゃん!
「どどどど、どーすんの!?」
「もうすぐ発動する」
「くっ……」
私は咄嗟にウルティムを連れてバルコニーに出た。
「うおおおおおおおりゃああああああ!」
全魔力を集中させてウルティムを思いっきり夜空に目掛けて投げた。
バアアアアアアン!
夜空が一瞬だけ明るくなった。
「はぁ……はぁ……。レベル下げてこの大爆発とか……」
なんという威力なのだろうウルティム。この子が改めて世界最悪の魔法だと自覚する。
「んもう! リオンくんのばかああああああ!」
私の嘆きは夜空に響いたかと思うと一筋に光がこちらに向かって落ちて来る。
「ただいま」
「おかえり!!」
ウルティムが大爆発を終えて戻って来ましたとさ。
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