第50話 【爆誕】メイド三銃士⭐︎⭐︎⭐︎

 理不尽に金が吹き飛んで、異世界とかブラック企業並みにブラックやんけ、とか思いながら久しぶりに寮の自分の部屋に戻る。


「「おかえりなさいませ♪♪ ご主人様♡♡」」


 ロイヤル双子メイドが出迎えてくれた瞬間、異世界とかホワイト企業よりホワイトやんけ、なんて立ち直ることに成功する。男って単純な生き物なの。


 あ、でも、目の前の光景で一つだけ疑問点があった。


「おかえりなさい。マスター」


「ウルティム。なに、してんの?」


 ラベンダー色した長い髪をツインテールにして、ウルティムがヴィエルジュ達と同じメイド服を着ていた。正直いって凄く似合っているし、この子にマスター呼びされちゃったら性癖が歪む。


 それに──。


「意外とフーラよりあるんだな」


「ぷっ」


 俺の言葉にヴィエルジュが吹き出してしまう。


「リーオーンくーん?」


「あ、やば。ごめん。つい……」


「ついってどういう意味だー!!」


 フーラは華麗なるコブラツイストを披露してくれた。


「ったああああああ! タイッ! タイッ!」


「ほれほれー! フーラ様のナイスバディが当たって幸せでしょ? でしょ!?」


「妹にされてたら幸せで逝ってたかも」


「流石は英雄リオン。まだまだ余裕がありますね。ふんっ!」


「があああああ! 熱い、熱い! 火が出てる! 火が!」


「実はですねご主人様。ウルティム様なのですが……」


「この状況で普通に説明しようとするなー!!」







 酷い目にあった。悪いのは俺なんだけど。


「それで。なんでウルティムがこんなところにいるんだ?」


 一旦、場が落ち着いたところで、俺の部屋で三人のメイドより話を伺うことにする。


「学園でも話そうとしたんだけど」


 フーラは見事に決まったコブラツイストで機嫌が直ったのか、彼女から説明を開始してくれる。


「ウルティムがリオンくんに話があるって言うからさ。それで連れて来たんだ」


「連れて来たのは良いけど、なんでメイド服?」


「似合うと思って。どう? メイド三銃士♪」


 ドヤァと三人がポージングを取る。両翼のロイヤル双子を差し置いてセンターに立つ無表情メイド。うん。アイドルとしてデビューできるんじゃないかというくらいのヴィジュだね。


「マスターに渡すものがある」


 センターに立つウルティムがどこからか出したのは、彼女自身に突き刺さっていた封印の剣だ。


「これでいつでもウルティムを使用できる」


 なんちゅう物騒なもんを渡して来やがるんだ、このロリっ子めっ。


 しかし、あの魔法をいつでも使用できるってなると、学園長室を大爆発させてやる、なんて黒い考えが一瞬だけ浮かび上がったよね。いや、実際にはやらないよ、そんな物騒なこと。


「そういやさ、どうして俺がウルティムのマスターなんだ?」


 俺のことをそうやって呼ぶ彼女に疑問が浮かび尋ねる。


「わたしを使えるから」


 すんごい端的な答えが返ってきやがりました。


「確かに。ご主人様がそちらの剣に魔力を振った瞬間に発動しましたよね」


「だね。ぶわーって大量の魔法陣が浮かび上がったし」


 あれはウルティムの意思ではなくて俺が知らずに使用してたってわけね。


「だったらさ、魔人化していたルべリア王女……。ほら、あの禍々しいのがウルティムを使おうとしてたろ? 実際に剣を引き抜いたのは王女だったんだけど、ルべリア王女には使えないの?」


「わからない。わかることは、わたしを使用できるのはマスターだけ」


 ふむ。そうなると、バンベルガの言っていた、『扱えるのは魔人化した者のみ』という情報は全く正しい訳ではなかったみたいだな。


 俺は知らぬ内にウルティムの使用条件を満たしていたってことか。


「そもそも、ウルティムは本当に魔法なのか?」


「そうですね。ウルティム様はどこからどう見ても人間の女の子にしかお見受けできません。魔法と呼ぶには違和感がございます」


「城にいる時も普通にご飯食べるし、普通に寝るし、人間となんら変わらないよ」


「魔法感が皆無だな」


「そういえば、城の部屋も自分で選んでたよね」


「あの部屋は快適」


 ウルティムが普通にそんなことを答える。


「人間味が凄いな」


「なんだか記憶喪失の女の子みたいですね」


 ヴィエルジュがボソリと呟くとフーラが手を合わせる。


「記憶喪失なだけで、実は魔法でもなんでもない普通の女の子って可能性もあるよね」


 クリスタルの中に剣をぶっ差して封印されていた時点で普通とは程遠いけどな。


「なぁウルティム。自分の過去とか、なにか覚えてないのか?」


 聞くと、無表情のまま首を横に振られる。


「わからない。なにもわからない」


 ただ……とポツリと零す。


「なにか大事なことを忘れている気がする」


 無表情の中にどこか寂しそうな顔が見えた気がした。


「なぁウルティム。昔のことを思い出したいとか思うか?」


 聞くと、数秒の間を空けてから答える。


「気にはなる」


 なんだか反抗期みたいな答えが返って来たな。


「だったらさ、俺達でウルティムの過去を調べてみないか? 本当に魔法なのか。それともただの女の子なのか」


 関わってしまった以上、得体の知れないままにしておくのも怖いため、ふたりにそんな提案をしてみせる。


「はい。私もウルティム様の過去が気になります」


「そうだね。私も気になるかも」


「決まりだな。だったら、明日から図書館とか色々と巡って探してみようぜ」


 おおおー! と、ウルティムの過去を探すことがなんとなく決まったのであった。

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