有名侯爵騎士一族に転生したので実力を隠して一生親のスネかじって生きていこうとしたら魔法学園へ追放されちゃった。こうなったら学園生活を謳歌してやるって思っていたのにどうやらそうはいかないらしい
第31話 一章エピローグ〜魔法学園は学園生活を謳歌させてくんない〜
第31話 一章エピローグ〜魔法学園は学園生活を謳歌させてくんない〜
「なぁ、ヴィエルジュ。フーラ」
お昼休みになり、俺達は教室から学食へと向かって歩いていた。ここ最近は三人で行動することが多くなり、自ずと三人でランチをする機会も増えた。
ヴィエルジュがお弁当を作ってくれることもあるが、学食に行く日もある。その比率は今のところ半々といったところかな。
「俺達がこの学園に入学してからさ、まだそんなに経ってないんだよなぁ」
何気なく放った言葉を、ヴィエルジュが拾って返答してくれる。
「まだ一カ月程度しか過ぎていませんね」
そうだねぇなんて笑いながらフーラが言ってくれる。
「制服の衣替えもしてないもんね」
「あ、そういえばアルバート魔法学園の夏服ってどんなのなんだ?」
フーラに尋ねると、その場でロングコートを脱いでみせた。
「こんな感じだよ」
「なぁんだ。ロングコート脱ぐだけかー」
それじゃ、ワイシャツに男子はパンツ。女子はスカートのどこにでもありそうな制服になるのか。ちょっとだけ残念だ。
いや、待て。
目の前のフーラはワイシャツにスカートというシンプルな制服姿だが、どこかのハイブランドを着ているみたいに輝いて見える。
結局素材が良ければな服はなんでも良い。可愛いは正義なんだね。
「それにしても、まだ一カ月しか経ってないのかよ」
はぁと大きく息を吐いてしまう。
「感覚的にはもう学園を卒業して、見事に子供部屋おじさんになっている頃合いなんだがなぁ」
「私達がヘイブン家を追放されてから、この短い間に色々とございましたものね」
フーラがロングコートを羽織り直している横で今日までの日々を思い返す。
ヘイヴン家を追放され、魔法学園の入学試験を受けることになった。
なんとか合格して路頭に迷うことはなくなったけど、入学したら速攻で退学をかけた決闘を申し込まれる。
その後、フーラに宣戦布告を受けて、班別実技試験で勝利。
試験で使用した大剣が学園長先生の大事なものだったらしく、それをフーラと探索することに。
その時、フーラと一緒にいるところを
そいつを倒して、黒幕の白衣の男も倒した。
フーラを元に戻して俺は英雄扱い。フーラとヴィエルジュ、両方との結婚を許されたけど、結婚できるのは一方のみ。片方を泣かすと国家権力が襲ってくる。
「濃すぎんだよ。なんだよ、この濃さ」
「あはは。確かにリオンくん達に取っては濃度の高い一カ月だったみたいだね。でもだよ、リオンくん。私はこうやってリオンくんと出会えて本当に良かった」
フーラはヴィエルジュの方を見る。
「妹とも再会できたからね」
フーラがヴィエルジュへ言うと、ヴィエルジュもまたフーラを見ながら口を開いた。
「私は……アルバートに来たくはありませんでした。もしお姉ちゃんに、お父さんとお母さんに会ったらどう接して良いのかわからなかったですし、忘れられていたらどうしようとも思っておりました」
でも、と彼女は自分の胸に手を置いてから言葉を続ける。
「今ではなんでもっと早く言わなかったのだろうと思っております。お姉ちゃんへ、お父さん、お母さんへ、家族へ生存報告ができ、かつ、自分はヴィエルジュとして生きて行くと宣言できて、それを受け入れてもらえて、本当に良かったと思っております」
「事態は丸く収まったってわけね」
俺の子供部屋おじさんの夢は砕け散ってしまったが、ヴィエルジュのこと、フーラのこと、アルバート家のことが丸く収まったのは良かったよな。
「このまま平和に時が過ぎてくれたら良いのにな」
そんなことを呟きながら晴れた青空を見つめた。
青い空はなんだか海を彷彿とさせた。
「夏になったらさ、みんなで海にでも行こう」
「はい。行きたいです」
「うん。行こうね」
こちらの唐突の言葉にふたりは迷いなく頷いてくれる。
「私の悩殺水着でご主人様を昇天させてさしあげます。お姉ちゃんは……。ぷすす」
「ちょっと待て。今の笑いの件について話し合おうじゃないか」
「いえ……。お姉ちゃんは良いなぁと」
「なにが?」
「子供の頃の水着を使いまわすことができて」
「おい待てごら、どういう意味だ」
「いえ、ヴィエルジュは年々買い換えないといけませんので。小さい方はエコで羨ましいと」
「なにをおおおおおお!? 小さい方が可愛い水着多いもん! 多いもん!」
「確かに小さい方が可愛いものが多いイメージです。大きい水着は、その大きさ分生地が必要になりますゆえ、どうしても質素なものが多くなりがちです。ああ、ヴィエルジュも可愛い水着が着たいものですー」
「垂れ乳に質素な水着だなんて救いようがないよね」
「垂れ──!? 誰が垂れ乳ですか!?」
「ヴィエルジュ」
「そんなわけないでしょ! 見てください、この完璧なボディ」
バーンとポージングするヴィエルジュ。
「その分、私はいつまでも若々しくて可愛い水着を着れるものね」
「無視!?」
珍しくヴィエルジュが壮大なツッコミを入れていた。
「待ってください! まだ垂れ乳の件が終わっておりません! ロケットですから! ヴィエルジュロケットですからね!」
こいつらのバトルって双子だなぁと思う今日この頃。
「おいおい。お前ら仲良くしろよ」
「「
思いっきり巻き込まれてしまいましたとさ。
「正直、おっぱいならなんでも好き」
「「サイテー!!」」
ええ……。正直に答えたのに……。辛辣過ぎるだろ。
「ヴィエルジュなんて、質素な水着着ても素材が良すぎるから質素な水着がハイブランドに早変わりだよ!」
「お姉ちゃんなんて、元から可愛いのに更に可愛い水着なんて着たら世界一可愛くなりますよ!」
「お前らさ、結局褒め殺しになるんなら最初から仲良くしてろよ」
そう言うと、三人見合って笑い合った。
「海。楽しみですね」
「夏になったら絶対に行こうね」
「ああ。最高の夏にしような」
そうだ。子供部屋おじさんの夢が砕け散ったのだから学園生活を謳歌するしかない。こうやって側にいてくれる人がいるんだ。
結婚とかなんだとかってのは後だ後。今は学園生活を謳歌してやる。
「──ん?」
三人で今年の夏の計画を立てながら歩いていると、掲示板が目に入った。
『英雄リオンと決闘(リオン対何人でも可)をして勝った者には
ナニヲイッテイルノカワカンナイ。
なにこれ……? なにこれええええええ!?
なんか俺の顔写真みたいなものの吹き出しに、『いつでもかかって来い雑魚共!』とか書かれているし。なにが起こってんだ!?
『いたぞ!!』
『囲めええ!』
『学園長直々のご命令だ!』
『決闘しろおおおおおお!!』
「うぉ!」
ドタドタとアルバート魔法学園の生徒達が俺を追いかけてやってくるので、俺は脱兎のように逃げ出した。
「あ、ご主人様!」
「待ってよ、リオンくーん!」
あの学園長先生。剣が折れたことを相当恨んでやがったか。
それでもここまでするか!?
「勘弁してくれええええええ!」
学園生活を謳歌してやるって思っていたのにどうやらそうはいかないらしい。
まだまだ俺の平穏な学園生活は遠いみたいだ。
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