第6話 はい♪ 俺のヴィエルジュですよ♡

 あーあ、やっちまった。やっちまったよー。


 あんなギャラリーがいる中で変に目立っちまったぁ。


 ほんと、悪目立ちするとろくなことがねぇ。


 つうか、学園の中を歩いている今も絶賛目立っているんだけどな。それはヘイヴン家の落ちこぼれが魔法学園内を歩いているからではないだろう。


 さっきからヴィエルジュが超ご機嫌で俺の腕にしがみついてやがります。


 この子ったらいつもよりずっと距離が近くて、彼女の柔らかい色々なところが当たってんだけど。


 思春期男子には刺激が強すぎるんですけど。あと、周りの視線も痛い。やたら目立ってる。


「おい、ヴィエルジュ」


「はい♪ 俺のヴィエルジュですよ♡」


「くぉっふっ……」


 やはりさっきの俺の言動がこの超ご機嫌を作り上げていたか。


「ふふ。俺のヴィエルジュだって。俺のヴィエルジュ……うふふ」


 ギュッ♡ ギュッ♡♡


 幸せそうに繰り返しながら更に強くしがみ付いて来る。


 改めて言われると、言ったこっち側としてはめっちゃ恥ずかしいんだが。


「なぁ。周りからの視線が痛いから、そろそろ離れてはくれませんか?」


「だめです。俺のヴィエルジュはご主人様から一生離れません。えへへ♡♡」


 ご機嫌が青天井になってやがる。どう交渉しても超密着は解放されないみたい。


 こうなっては仕方がない。こうやって学園内を歩くしか選択はないか。


 中庭の噴水。


 訓練場。


 流石は魔法学園だけあって図書館がバカでかい。


 アルバート魔法学園の図書館はステラシオン王国の図書館よりも大きいのではないだろうか。


 ま、騎士国家のステラシオンは脳筋の集まりだもんな。


 本を読む奴の方が少ないよね。魔法は知識が必要だから自ずと図書館も大きくなるわな。


 とかなんとか考えながら進んで行くと、『受験生はこちら』の看板が立っている受付を見つけた。


「アルバート魔法学園へようこそ。本日は入学試験を受験されに来られましたか?」


 受付の女性の質問にヴィエルジュが答える。


「はい」


「ええっと……」


 メイド服を着ている方が答えるもんだから、女性が俺とヴィエルジュを見比べる。


 え? 使用人が受けるの?


 みたいな感じなんだろう。


 それを察したヴィエルジュが追加で答える。


「本日受験を予定している、リオン・ヘイヴン様とヴィエルジュです」


 申し出ると


 あ、2人共受験生ね


 なんて納得した様子で受付にある書類を確認する。


「リオンさんとヴィエルジュさんですね。──はい、確認が取れました」


 流石は大人というか、学園の人というか。


 俺の名前を聞いてもバカにして来ない。


 そりゃ学園関係者がそんなことをしたら問題になるもんな。


 こんな些細なことが俺としては嬉しいね。いちいちバカにされないってのは良い。


「一次試験会場はあちらになります。このまま進んでください」

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