第2話:息子

昔から親父のことが気に入らなかった。


これと言った理由はない。ただなんとなく。


だからすぐに家を出た。自由になった気がした。なんでも出来る気でいた。


けれど、親元を離れて生きていくのは想像よりも遥かに難しかった。


何度も死にかけた。何度も諦めた。


戻りたい、戻れるわけがない。


そんな生き方をして五十年ほど経ったある日、豪邸を見つけた。


ここに住んでる人はどんな人だろうか。少なくとも自分のような人ではないだろう。


気づけば門の前まで来ていた。


離れようとした時、豪邸の中から人が出てきた。殺されてしまうと思った。しかし、逃げることは出来ずその場で気を失ってしまった。


目を覚ましてもまだ生きていた。枷もついていない。さらには仕事をやると言われた。不思議に思ったが喜んでその誘いを受けた。


仕事をしている中で様々なことを教えてもらった。日々成長していくのを感じる。


豪邸の主は素晴らしい人でよく面倒を見てくださる。ついには財産の管理までさせていただいた。


幸せだった。


しかし、主の命がもう長くないことを知った。様々なお偉い様方も集まり、皆で主の最後の言葉を待った。


主に近くに来るよう言われた。何事かと思った次の瞬間、


「今まで黙っていたが、お前と私は父子の関係だ。」

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衆生 無相 @shujo-

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