衆生
無相
第1話:信解、歓喜
ある親子がいた。
息子は父の元から離れ流浪すること五十余年。その間父は息子を探し出すことが出来なかった。
父は広く貿易をし、財産を蓄え豪邸で暮らしていた。そこへ偶然、落ちぶれてしまった息子が門前へとやってきた。当然息子はそこが父の家とは知らない。しかし父はその男が息子だとすぐに気づき、側近に連れてくるよう命じる。
ところが息子の心は卑しくなっており、捉えられて殺されてしまうと思い気を失ってしまう。
その様子を見た父はすぐに名乗ることはせず、息子の心が成熟していくのを待つことにした。
そこで先ず、見窄らしい格好をしたものを使わして仕事をさせた。教育し、助け、遂には重用し、全ての財産の管理を任せ信頼関係を築いていった。
息子の心の成長を知り、父は命終に臨んでそこで父子の名乗りをあげた。
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