第53話 第二章完

「それではお世話になりました」


 ミルリーフがポピー親子に別れの挨拶をする。

 一夜明けても、家宝の勇者の剣が偽物だったショックで父親の顔は青ざめていた。おそらく一睡もできなかったのだろう。


「ま、まあ元気出せオッサン……この旅でなんかレアなアイテムでも見つけたら持ってきてやるからさ……」

 さすがのアルカンタラも今回ばかりは優しい言葉をかける。


「うう……あ、ありがとうございます……お気をつけて……ううぅ……」

「アルカンタラ様、ミルリーフ様 少しの間ですが楽しかったですわ! お二人の活躍を祈っております」


 二人はポピーの家を後にした。


 ◇


 ボアモルチを出る際にギルドで出国の手続きが必要ということで二人はギルドへ。


「まったく、出るのも入るのもこんな手続きがいるのか?」

 アルカンタラは面倒くさいに言う。


「仕方ないでしょ、これでもSランク冒険者にしてもらえて他の冒険者よりは簡単に手続きできるはずよ」


 ギルドに入るとあの受付嬢の姿が。


「な、なにかご用ですか……?」

 アルカンタラに今日もおびえているようだ。そんな受付嬢にアルカンタラはズカズカと歩み寄る。


「ひいいぃぃ!」


「おう、世話になったな。元はと言えば、お前がクエストを紹介してくれたからSランク冒険者になれたわけだしな。感謝してるぜ」

「本当だわ。ありがとうね、お嬢さん」


「は、はあ……」

 まさかの感謝の言葉に困惑する受付嬢だった。


 それなら二人は出国の手続きをする。

 エルフの森に向かうまでの道をパスするための許可書を作ってもらうのだ。



『ガチャ』

 その時、ギルドに一人の男が入ってきた。


「……おや? あ、あなたは……アルカンタラさんじゃないですか!」

 男はアルカンタラに笑顔で駆け寄ってくる。


「お、お前は……荒野で会った激ヨワ剣士か!?」

 アルカンタラの表情が曇る。


「はい! バーランダーです!」

 男は以前、このボアモルチに向かう途中の荒野で、モンスターから助けてことのある冒険者バーランダーだった。


「アルカンタラさん達も冒険者になれたんですね! よかったです。いやぁ大変ですよねクエストは……僕らも毎日、薬草摘みばっかりですよぉ!」


「お、おう……」


「これじゃ勇者になる前に草むしり職人になりそうですよ! ハッハッハッ!」


「……ははは」


 爽やかにニッコリと微笑む青年に、気まずい返事をするアルカンタラだった。


「僕らはもうEランククエスト30回はクリアしましたよ! あと70回クリアすればDランクに上がれます! アルカンタラさん達は?」


「うーん、た、たしかまだ2回くらいだったかな……な、なあミルリーフ?」

「そ、そうね!」ミルリーフも気まずく微笑む。


「そうですか! お互い頑張りましょうね! アルカンタラさん、なにか困ったことがあったらなんでも言ってください! 友達なんで、いつでも助けに駆けつけますよ!」


 そう言ってバーランダーは笑顔で次のクエスト(薬草摘み)に向かっていった。


「……よ、よかったわね、アルカンタラ。お友達ができて」

「……アイツ、俺に助けられたこと忘れちまったのかな……?」


 そんな期待のEランク冒険者を見送り、二人は西を、エルフの森を目指し出発した。



★★★★★★

あとがき

お読みいただきありがとうございます。

第二章完結です。

第三章ではエルフの森での冒険になります。

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