第37話
「ああ、そうだ! Cランククエスト コウモリモンスターだ。恐ろしいモンスターだった……今でも思い出すと震えるゼ……
仕方ねぇ、コイツとの死闘の話を聞かせてやるよ。
俺サマは森に潜むこのモンスターの殺気に気づいた。その時、俺サマは――――」
金髪は自らの武勇伝をペラペラと語りだす。
ボアモルチに現れたスーパールーキーに周りの人だかりは興味津々に耳を傾ける。
しかし、アルカンタラとミルリーフの耳には金髪の声は届いていなかった。
2人は目を合わせ、もしかしたら自分たちは大きな勘違いをしていたのかもしれない? と気づいた。
「ちょ、ちょっと待ってください!? そ、その角……」
その時、受付嬢がアルカンタラの持つ長い角に気づいた。
「そ、そ、それって……まさか…… 貸してください!」
受付嬢は興奮しながら、許可を得る前にアルカンタラの手から角をひったくり、じっくりと鑑定する。
「あー……それは……すまん、俺たち説明ちゃんと聞いてなくて、勘違いしていたみたいだ……」
アルカンタラは気まずそうにつぶやく。
「間違いない……これは……魔の森の主の角だわ!! どうしてアナタたちがこれを!?」
受付嬢は驚きの表情を浮かべる。そして、興奮した受付嬢は大声で叫ぶ。
「森の主討伐クエストは……うちのAランククエストですよっ!!!」
「は? Aランク?」
アルカンタラとミルリーフは目を合わせて驚いた。
自分たちが受けたCランククエスト、それはたった今、金髪が得意げに見せびらかしてきた羽の持ち主、森の入り口にウジャウジャと飛びまわっていたコウモリモンスターの討伐だったのだと。
「はい! 今までボアモルチのどんな冒険者もクリアできなかったクエストです!」
受付嬢の言葉にギルド内は一瞬静寂し、すぐに大歓声が巻き起こった。
あちこちから『スゲー』『信じられない』『あの金髪なんて全然大したことねぇな』などといった声が起こる。
「……間違えたけど、まあよかったみたいね……」
ミルリーフはひとまずホッととした。
あまりの騒ぎにギルドの奥から、コツコツという革靴の音を立てながら明らかに役職の高そうな1人の男が出てきた。上質な仕立てのスーツを着た紳士だ。
紳士は受付嬢にことの成り行きを聞き、アルカンタラに歩み寄ってくる。
「君たちが森の主を討伐した冒険者だね?」
「あ、ああ……」
威圧感のある紳士の超えにアルカンタラは少々たじろいだ。
「……すまないが、少し奥の部屋に来てくれるか? 君たちに話があるんだ」
紳士は神妙な面持ちでアルカンタラの瞳を見つめる。
アルカンタラが横をチラリと見ると、ミルリーフは小さくうなづいた。
その時、ミルリーフの背中のポピーがゴソゴソと動く。やっと目を覚ましたしたようだ。
「あ、あれ? ワタクシどうしてギルドに? 森にいたはずですが……」
辺りをキョロキョロし、状況がつかめていないポピー。
そして、ポピーは紳士を見て目を丸くする。
「あれれ? どうしてお父様が?」
「ポピー? なんでお前が冒険者の彼らといるんだ……?」
紳士、いやポピーの父親もなぜかミルリーフに背負われた娘のポピーを見て驚いた。
「ん? お前の親父さんなのか? 世の中狭いな。
あ、オッサン、悪いけどちょっと待っててくれるか?」
「オッサンって……アンタね!」
ミルリーフの叱る声など気にもとめず、アルカンタラはギルドの端っこで気まずそうにうつむく金髪に歩み寄る。
「おい……スーパールーキー、早く続き聞かせてくれよ? お前とモンスターの死闘をよ?」
「うぅ……」
アルカンタラは怯える金髪の目を見て、ニヤリと笑った。
「あと言っとくが……ソーサーは俺なんかよりずっと強いぞ?」
アルカンタラは今度は笑わず、金髪をにらみつけた。
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