第36話
気絶したポピーをミルリーフが背負い、3人がギルドに戻ると騒がしい雰囲気になっていた。先ほどまでとは打って変わって、なにやら明るい声が飛び交っている。
「なんだなんだ?」
ギルド内の人だかりの中央には、ソーサーを馬鹿にしたあの冒険者 金髪豚野郎の姿が。
彼の周りは『スゲー、さすがだよ』などの歓声が飛んでいる。金髪豚野郎はヘラヘラと浮かれた表情だ。
「おい、あの金髪なんかあったのか?」
アルカンタラは不機嫌そうに例の受付嬢に声をかける。
「ひいぃぃ! ア、アナタは……! お、お早いおかえりですね……」
あまりの早いアルカンタラたちの帰還に、Cランククエストはクリアできずに逃げて帰ってきたものだと受付嬢は思っていた。
「お、おかえりなさい……ひとまず無事でよかったです」
「で、なにがあったんだよ?」
アルカンタラの姿に怯える受付嬢だったが、状況を説明してくれた。
「あの金髪の冒険者さんなんですけど、Eランククエスト中にモンスターに襲われたらしいんです。
そのモンスターってのが、ちょうどアルカンタラさん達と同じCランククエストのモンスターですね」
「ほう、てことは……あのイノシシくらいの強さのモンスターか」
「ん? イノシシ? それであの金髪さん、なんとそのモンスターを討伐したんですよ! 冒険者になったばかりのEランク冒険者がですよ? すごい快挙です!」
受付嬢はスーパールーキーの誕生に目を輝かせていた。
「はーん、あの金髪がね……ムカつくがなかなかやるな」
アルカンタラはタメ息交じり舌打ちをする。
「たしかに……Cランクってことは森の主クラス……それを倒すなんて……ムカつくけどあの金髪すごいわ、悔しいけど私より強者だわ……」
ミルリーフは歯を食いしばる。
「あ! そういえば、皆さんCランククエストはどうでしたか? クリアできなかったのは残念ですが、しっかりEランクからコツコツ頑張ろうと思っていただけましたかね?」
受付嬢は少し得意げにアルカンタラたちをチラリと見る。
「……は?」
アルカンタラはキョトンとする。
「え? だって……」
早い帰還と初心者冒険者の2人はCランククエストから逃げ帰ったものだと思っている受付嬢。
その時、金髪冒険者がアルカンタラに歩み寄ってくる。
「ようソーサーファンの田舎者、俺サマの偉業はもう聞いたか? 参ったゼ、俺サマがやっつけたモンスター……なんとCランククエストのモンスターだったらしいんだ」
「うるせぇな……聞いてねえよ」
「ハハハ、お前らにも聞かせてやりてぇな、あのモンスターと俺サマの死闘をよ!」
金髪はアルカンタラを見下すような笑顔で武勇伝を語りたくウズウズしていた。
「黙れ! あれくらいのモンスター倒したからってイキがってんじゃねぇよ?」
アルカンタラはめんどくさそうに金髪をあしらう。
「ま、同期の冒険者のよしみで、いつだってサインくらいはしてやるゼ?」
「……おいミルリーフ、こいつ殺してもいいのか?」
「アルカンタラ……落ち着いて。相手しちゃダメよ」
怒りに震えるアルカンタラを制するミルリーフ。
「そういえば姉ちゃん! ミルリーフっつーのか、前に見た時も美人だと思ってたんだ。こんな冴ねぇ男より俺サマのパーティーに入ろうゼ」
金髪はニヤニヤとしながらミルリーフの肩に手を回す。
「キャ! なにすんのよ、離しなさいよッ!」
「姉ちゃん、俺サマと一緒に、冒険者の頂点からの景色見たくないか?」
「おいテメェ!」
とうとうキレたアルカンタラは金髪の胸ぐらを掴む。
騒然とするギルド、中心にはアルカンタラと金髪が。
スーパールーキーに絡むアルカンタラを、ギャラリーはいぶかしげな目で見つめる。
「おいおい、俺サマとやるっつーのか? 俺サマはCランククエストをクリアするほどの冒険者だゼ? はっきり言って……お前とは格が違うゼ?」
金髪は掴みかけられながらも自信満々にニヤリと笑う。
そして、金髪はカバンに手をやり、何かを取り出す。
「よく見ろ! これが俺サマが討伐したCランククエストの戦利品だ!」
金髪はギャラリーの見つめる中、手をグイっと上げる。その手に握られていたのは、ハンカチほどの大きさのモンスターの黒い羽だ。
「……は? なんだそれは……?」
アルカンタラは金髪のかかげる羽をキョトンと見上げる。
「あれ? そ、それって……森の入り口らへんにいた……コウモリモンスターの羽?
え? Cランククエストがコウモリ……?」
ミルリーフは戸惑いながら言う。
【★あとがき★】
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