第38話

 アルカンタラたちはギルドの職員と思われる、ポピーの父親に連れられて、執務室の奥にある応接室に通された。

 豪華な作りの応接室をアルカンタラたちはキョロキョロと見渡し、緊張しながら席へと着いた。


「……なあ、俺たち勝手に森の主を倒しちまったから怒られんのかな?」

 アルカンタラは小声でミルリーフに耳打ちをする。

 ミルリーフは首をかしげながらも、「うーん、そんな怒ってる感じじゃなかったけどね……」と小声で返した。


 受付嬢がコーヒーをアルカンタラたちへ持ってきた。相変わらず緊張しているようだが、以前までの緊張感とは少し違っているようだ。

 アルカンタラがただのチンピラ冒険者ではなく、Aランククエストをクリアするほどの冒険者と分かったからだ。


「突然呼び出してすまない。それと娘のポピーが迷惑をかけてないと良いのだが……」

 父親はポピーをチラリとにらみつける。


「ふふふ、お父様。ワタクシ、すごいことがわかったんです! なんとこの方達――」

「ポピー! ここからは大人の話しだ。邪魔をするなら出て行きなさい」

「うぅ……すごいことなのに……」

 ポピーの言葉をさえぎって、厳しく注意する父親。ポピーはひとまずシュンとおとなしくなった。すぐにでもアルカンタラのこと、古代魔法のことを話したかったのだろう。


「さて、私はこのボアモルチのギルドの所長をしている者だ。

 お、なかなか渋い鎧だね? 復刻版かい?」

 男はアルカンタラの鎧を見て呟く。

「……なんか最近よく聞くなソレ……」

 アルカンタラは小さく苦笑いをする。


「……まず、森の主を倒したと言うのは君達で間違いないね?」

 そう言い、男は2人を真剣な眼差しで見つめる。

 ポピーのギルドに詳しいところは、ギルドの所長をしているこの父親から来ているようだ。


「は、はい……まあ、森の主を倒したのは私ではなく、彼……アルカンタラですが……」

 ミルリーフはアルカンタラを指差す。


「ほう、君が……ん……アルカンタラ……?」

 男は体を震わせ、表情が固くなる。


「アルカンタラ……アルカンタラ……ま、まさか……な」

 アルカンタラの全身を舐めるように見る。


「な、なんだよ……」

 嫌な予感を感じたアルカンタラはとっさに、腕に巻かれた魔方陣を隠すための包帯を無意識にさする。


「君、その包帯だが……いや、包帯ですが……中を見せてもらうことはできませんか……?」

 突然、アルカンタラへの話し方が丁寧語に変わる男。


「……うぅ」

 ヤバい! とか感じたアルカンタラとっさに横に座るミルリーフに目をやる。


「……すみませんが、先にご用件を教えていただけませんか?」

 きぜんとした態度で、ミルリーフは男に言った。


「あ、ああ……そうですね……。すみません、つい興奮してしまって……あ、いえ、なんでもありません……」

 先ほどまでとは打って変わって、モジモシとしだすポピーの父親は話を始めた。

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