第3話:姫乃澤うるるの思い出
現実の姫乃澤うるるを見て、俺は一つだけ高校在学中のエピソードを思い出した。
それは、彼女との交流ではなく、俺が一方的に彼女を見ただけ。
彼女は俺が彼女を見ていたことに気づいてすらいないだろう。
俺もまずかったと思ったので記憶から消していたほどだ。
俺の学校は当時の最寄り駅から約2キロ離れていた。
最近ではもっと近くの駅ができたらしいので多くの生徒は新しい駅を使っていると聞いたが、俺たちの時代はほとんどのヤツがその2キロを歩きで登下校していた。
歩くとそこそこの距離なので、登下校には自然と最短コースが選ばれ、みんな同じ道を歩いていた。
別に通学路という訳ではないけれど、そこから外れて歩く生徒はほとんどいなかったと思う。
そんな中、俺は時々違う道を歩いていた。
大きくそれるわけではないけれど、細い道を使ってみたり、脇道でもっといい道がないか探検していたのだ。
ある日の放課後、学校から駅までの道から少し離れた児童公園で、姫乃澤うるるがひとりいたのを見た。
高校2年の冬だったと思う。
寒いのに一人で公園のブランコに座っているのが変だと思っていた。
彼女が向いている方向的にすぐに彼女に気づいたけど、彼女が泣いてるようだったので俺は慌てて彼女に見つからない様に姿を隠した。
かわいいだけでも十分に注目されているのに、誰もいない公園で一人泣いているのを見てしまったのだから、俺は勝手に親近感を持ってさらに彼女に魅かれたのを覚えている。
「俺だけが本当の彼女を知っている」みたいな心理だろうか。
今考えてみたら、その実、全く彼女のことは知らないのだから、完全なる俺の思い込みだったと言える。
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