煙々羅
ここ最近は落ち着いた生活にありつけている。人間関係も良好。強いて言えば車検の通知書が雨で濡れてポストの中で息絶えていた事ぐらいだ。
夜であり朝である午前四時、今日も寝れなかった私は部屋の小さな電気を付ける。
ジョイントに火をつけようとしてライターを擦ると、飛び散る火の粉でさえ閃光のように眩しく感じる。葉が燃える時の赤い仄かな灯りが今は調度がいい。きっと小説の章と章の間にもこんな虚無な時間があるのだろう。静かで、救われている時間。止まって、私の世界が何処へも行かない時間。
喉の締めつけさえも感じないほどに煙に巻かれて足が浮く。ふいに行先麻違えた煙が目に染みる。ジョイントを灰皿に置くと、エメラルドグリーンを輝かせるBill EvansのPortrait in Jazzのレコード盤をセットして、いつもよりも少しテンポノブを下げて針を落とす。優しいピアノジャズが薄暗さを少し暖色にしてくれる。
生きている。
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