駄作

初めてパソコンを買った。

さて何をしようかとノートパソコンを開いたのは高校生の冬時でした。鳥すら羽を開けたがらない氷点下30度の世界。


アメリカの小さな田舎町。モーテルを改装して作られた学生寮。薄暗く、窓枠はまだ木製。聞こえるのは凍える風の音だけ。蛇口は古くて、回すと高い金属音とともに茶色い水を吐き出す。やることもない季節、私は一人で出来ることを探していました。


狂いそうでした。人間関係も良好とは言えず、人を傷つけることもありました。

他人に愛を持つことも出来なくて、自分を刺している棘も元は自身で纏ったものだということにすら気づいていませんでした。


お酒でも煽りたい。こっそり酒を輸入して販売してくれる中華のおっさんが学校にチクられ消えるのはまた別の話。


古いパイプ型の暖房がうねりを上げる。シャワーを浴びた私はよれたTシャツに下着のままの適当に椅子に座る。


折れ曲がった腰、ため息交じりで目的もなく動画を見ていると、一つの動画が私の目に飛び込んできました。

そこには日本を素晴らしく映した映像が軽快な音楽と共に流れていた。


まるで、私の何かが弾ける音がした。ガラスの破片がキラキラと舞うように、衝撃の突風に吹き飛ばされぬように画面につかまる。

その時初めて私は知りました。【動画】というものは、人の感情を本人の意思に反して引きずり出すことができる。


当時私は芸術家志望の何でもない学生。写真知識は得ていたものの、動画の知識は微塵もない。最初は知識もないままスマートフォンで動画を撮っては編集してみた。

文字を入れたり、動画を切ったり、音楽を入れて色まで変えた。


ダサかった。

この世の物とは思えないほど反吐が出た。画面の中で見た映像はあまりにも素晴らしかったのに。


絵を描く事以外才能がない私にとって、初めての感情だった。

向いてないが故の諦めではなく、私にはこれを超える映像を創る才能があるという確信でした。

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