第18話 兄妹②

「それで、藤井の妹は何て言ってたの?」


 トモコは寄りかかっていた椅子からやっと身を乗り出した。


 ◇


「原因は私なんです。私がにいにを巻き込んじゃたから」


 レナははっきりとそう言った。


 私は予想外の展開にいまいち理解が追い付けず、慌てて聞き返した。


「え…どういうこと?」


「私が悪い人たちに絡まれてるのを、にいにが助けてくれたんです。でも、今度はにいにが目をつけられてしまって…」


 レナはそう言うと、目に涙を浮かべ始めた。



「ちょっと待って。ってことは、あなたを助けるためにやったことなんだよね?」


 私が確認のためもう一度聞き返すと、レナはこくりと頷いた。



「…それじゃあ、藤井あいつ全然悪くないじゃん。だって、レナを助けるために喧嘩したんでしょ?」


「はい…」


「そんな喧嘩なら万々歳だよ!逆にあなたを助けない方が、よっぽどタチが悪い」



 私は彼のお面を取った気がした。


しかし、では何故それを教頭に言わなかったのだろう。


いくらか注意や指導を受けるにせよ、理由を説明していれば、もっと処分は軽くなっていたはずだ。



 また新たな疑問が生まれた。


 しかし、そんなことは関係なかった。


レナから真相を聞いた時点で、私の気持ちは既に決まっていた。



「ありがとレナ。あなたのお陰で点と点が繋がってきたよ」


 私はレナの肩を抱き、目を合わせて言った。



「絶対にお兄ちゃんを立ち直らせるから待ってて」


 私が別れ際そう言うと、レナはにっこりと微笑んだ。


 ◇


―――昼休みの教室


 私とトモコは椅子を互いに向けて話し合っていた。



「…なるほど。つまり、藤井は妹想いの優しいお兄ちゃんだった…ってことね」


「そうなんだよ。だからもう一度教頭に何があったのか聞かないといけないし、藤井にも本当のことを話して貰わないといけない」



 私がようやく説得し終えると、トモコは顎に手を当ててしばらく考え込んだ後、丸眼鏡をくいっと上げた。


(来たっ!)


 私は心の中で大ガッツポーズをした。


トモコがこの動作をする時は、勝ちが確定している時なのだ。


私はトモコの動向を、固唾を飲んで見守った。



「絶対に入れるよ、あの悪ガキ」


トモコの言葉で、私たちはすれ違っていた拳を再び合わせた。



 アナライザー復活の第一歩。


私たちは藤井をパーティーに加えるため、石頭教頭の攻略を模索し始めた。

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