第17話 兄妹①
話は、樋口さんにアドバイスを貰った次の日に遡る。
私はすっかりふてくされたトモコを、なんとかなだめようとしていた。
◇
「だからさトモコ、もう一回だけ
「…あんな奴ほっとけば良いんだよ。それに、私たちには時間がないんだ。かまってる時間が無駄だよ」
トモコは珍しく乗り気ではなかった。
やはり、藤井に裏切られたと思っている節があるのだろう。
それに何より、停学期間の交渉が上手くいかなかったことが、彼女のプライドを傷つけたのかもしれない。
私はその日、一人で藤井の家に向かった。
「なんだか煮え切らない」というのが、正直な気持ちだった。
―――喧嘩の真相は何なのか。
―――藤井の音楽は本物なのか。
何も知らないまま手を引くのは、気持ちが悪かった。
・・・
「あの、何かご用でしょうか」
藤井の家の前で突っ立っていると、後ろから可愛らしい声が聞こえた。
振り返ると、小学校低学年くらいの女の子が、エコバッグを持って立っていた。
バッグから飛び出したネギが、良い味を出している。
私は「頭を撫でたい!」という衝動をなんとか抑え、平然を装った。
「あ…私、藤井圭太くんの同級生なんだけど…彼いるかな?」
「今はいないと思います。用件があれば兄に伝えておきます」
(兄…?)
私はその言葉に引っ掛かった。
「もしかして、あなた妹さん…?」
「はい。妹の藤井レナです」
・・・
確かに、似ていると言われればそうかもしれない。
ふてぶてしい兄とは違って、
ツインテールの髪型とふっくらした頬っぺたが、より一層可愛らしさを際立たせている。
もしかしたら、彼女は真相を話してくれるかもしれない。
そんな考えが頭をよぎり、私は心臓の鼓動を押さえつけながら尋ねた。
「お兄ちゃんの喧嘩について、何か知ってることとかある?」
それを聞くと、レナは少し顔をしかめた。
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