第2話 復活の兆し①

夏休みが終わり、駅はサラリーマンや制服姿の学生で溢れ返っていた。


もちろん私も例外ではない。


私は忘れかけていた順路を思い出しながら、鈍り切った脳をフル回転で動かした。




ぎゅうぎゅう詰めの電車に20分ほど乗り、駅から10分ほど歩くと学校がある。


私は普段ギリギリの時間で登校するから、優等生のトモコとは滅多に会わない。


だから、背中をドンと押された時は、心臓が飛び出るくらい驚いた。


「おはよ、珍しく一緒だね」


振り返るとニコニコのトモコが立っていた。


「おどかさないでよ、もう」


私が少し怒ったように言ったので、トモコはすぐに「ゴメンゴメン」と謝った。


だが確かに、トモコと一緒に登校するのは久しぶりだった。


幼稚園・小・中・高と被りに被った人生をトモコとは歩んでいるが、こんなことは数えるほどしかない。


そんな感じで過去を懐かしんでいると、私はまた重要なことに気づいた。


のんびり隣を歩くトモコの肩を掴んで、私は慌てて言った。


「トモコ、今何時!?今までも何度か一緒になったことはあったけど、全部あんたが遅刻してた時じゃん。私に合わせてたらまずいよ!」


「何言ってんの、まだ7時半だよっ。こっから学校までなんて10分もかかんないじゃない」


そう言われて私はスマホを取り出した。トモコの言う通り、確かにまだ7時30分だった。


「それに、驚いたのはこっちだよ。あんたがこんな早く登校してるはずないから、本当に私が間違えたのかと思っちゃったよ。あんた何かあったの?」


「一週間前の日曜日にトモコと遊びに行ったじゃん…」


「ああ、慰め会ね。今んとこどっちも勝ち星挙げてないけど…やっぱりそれが原因?」


「ううん、違うんだ。ほら、私その日の帰りにさ、トモコを置いてストリートライブ見に行ってたでしょ?」


「ああ~あんた好きだもんね。それで?」


「音でわかったんだけど、どうしても確かめたくて。それで見に行ったら、樋口竜也がギター弾いてたの」


「樋口竜也…誰だっけ?聞いたことはあると思うんだけど、なんか思い出せないよ」


トモコはうーんと唸った。

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